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【2日目】二条城のお土産

 二条城の休憩所には、二条城オリジナルのお土産が買えるショップコーナーと京都らしい抹茶味を中心にしたスイートを楽しめるカフェコーナーがある。  オシャレな街カフェとは正直ほど遠いのだが、それでも、ここでしか買えないもの、食べられないものがあり、観光客には人気がある。  そんな1人である羽小敏は、スラリと美しい立ち姿を封印し、先ほどからしゃがみ込んでいる。 「どう、小敏?お目当ての物は手に入った?」  二条城ガチャガチャに夢中な小敏は、子どもたちと並んで競うようにしながらも、大人買いをして、子どもたちだけでなくその親からも顰蹙を買っている。 「何をしているのですか、小敏?カプセルトイ?」  高級なアンティークなコレクターである煜瑾は、カプセルトイのミニチュアにも関心があった。 「あ、煜瑾。これ、あげる」  そう言って、小敏は重複しているらしいカプセルを、ニッと笑って煜瑾に渡した。 「何ですか、これ?」  カプセルの中を透かして見るようにしていた煜瑾が、不思議そうに呟き、ソッとカプセルを開けた。 「おお、まさかの〈大政奉還〉!」 「は?」  思わず茉莎実が上げた声に、煜瑾と文維は意味が分からずキョトンとした。 「あ、ゴメン。〈大政奉還〉というのは、日本の歴史用語なの。〈将軍〉が、〈天皇〉に政権を返還するって、ことで。このフィギュアは、この二条城の大広間で、最後の将軍が部下に〈大政奉還〉しますよ、って説明している有名なシーンなの」  茉莎実の説明に、段差のある畳の上に小さな武士が並んでいる不思議なフィギュアの意味を、文維と煜瑾はようやく理解した。 「う~ん、コンプリートまで、あとちょっとなんだけどなあ」  こんな時には妙に粘り強い小敏に呆れて、茉莎実は文維と煜瑾をカフェコーナーに連れて行った。 「あ、コレ!さっき小敏が見せてくれたソフトクリームですね」  目敏く煜瑾が黄金ソフトクリームを見つけた。堂々と輝くレギュラーサイズに、小ぶりのハーフサイズもある。 「うわ~、悩むわ~。大きいのはバニラソフトに金箔で、小さいのは抹茶ソフトに金箔ですって!…って、いうかこの値段!」  思わず声を上げた茉莎実だったが、見たことも無いソフトクリームの価格に目を見張る。 「ボクはね~、レギュラーサイズの大きい方で、バニラに金箔のやつ」  いつの間に合流したのか、小敏が嬉々として選択する。 「じゃあ、私はハーフサイズにします。食べきれないと困るので」 「あ、私はこっちの白玉ぜんざいソフトにしよう、っと」  それぞれが好きなように注文すると、全員分を珍しく小敏が支払った。 「いいの、小敏?」「小敏、大丈夫ですか?」  つい今しがた、二条城オリジナルのガチャガチャで散財したであろう小敏を茉莎実も煜瑾も心配していた。 「ボクだって、たまには払うよ」  そう言って、傷付いたように小敏はカワイイ唇を突き出した。

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