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第12話 吸ってみた

 ヨシュアと太一は急いでタクシーをつかまえると、ヨシュアのマンションへ戻った。  太一は事故にあったことすら、なんだか夢だったように思ってしまう。 「なあ、ヨシュア、俺なんにも変わった気がしねぇんだけど、本当に仲間になったのかな?」 「歯は生えてますか?」 「歯って……ああ牙のことか」  太一が確かめてみると、小さい牙が2本確かに生えている。 「生えてるな」  鏡を見ながら太一はニカっと笑ってみる。 「タイチ、実はタイチはまだ蘇生しただけで、半分人間なのです。重要なのはここからです」 「ん? まだやることがあるのか?んじゃ、早くやろうぜ」  タイチはすがすがしい顔をしている。 「今度はタイチがボクの血を吸うんですよ。その牙で」 「俺が? うまくできるかなあ。なんせ、俺、まだ新米吸血鬼だからなぁ」 「ボクだって初めてだったんです! 怖かった……」 「ああ、そうか」  太一は笑いながらヨシュアを抱きしめた。 「ありがとうな、ヨシュア。俺を選んでくれて。俺、これで良かったって思ってるよ。こんなことにならなかったら、俺もヨシュアもきっと決心できなかった」 「本当に……そう思いますか?」 「ああ。俺、事故にあって死ぬかもって思った瞬間に、もっと早くこうしておけば良かったって後悔した。だから、今はすっきりしてるよ」 「じゃあ、ボクの血、吸ってください」  ヨシュアは少し恥ずかしそうに顔を赤らめた。 「えーっと、どこがいい? やっぱ首?」 「一般的には首……かなあ」 「どうやって吸うの?」 「刺したら吸えますよ。簡単です」 「ふーん。じゃ、やってみるか」  ヨシュアがシャツのボタンをはずすと、太一は手で牙の場所を確かめて、ヨシュアの首筋に強く押しつけてみる。  ぶつっと刺さる感触があって、身体に急速にエネルギーが流れ込んでくるような気がする。 「もう……いいと思います」  ヨシュアに言われて、やっと太一は口を離す。  口元から、ぽたっとヨシュアの血が滴った。 「これで、完了です。タイチはブラッド家の一員になりました」  ヨシュアは嬉しそうに、ちょっと照れながら言った。 「今日からタイチ・ブラッドです。ボクと一緒にイギリスへ帰ってください」 「ああ、そのことなんだけどさ……隆二にだけは挨拶していってもいいかな。もう会えないかもしれねぇし」 「そうですね……隆二さんは、うすうすボクのことを感づいている様子でした」 「きっと、あいつはわかってくれると思うんだ。話しておきたい」 「隆二さんはタイチと似てるから……きっとわかってくれると思う。そしたら、隆二さんが生きている間はまた会いに来れますよ」 「ああ、そうだな。ところでさあ、俺、なんだか身体が熱いんだけど」 「実はボクもなんです……タイチの血を吸ってからずっと」 「やべっ勃ってきた。なんでだろ」 「うーん……そう言えば婚姻の儀式をしたヴァンパイアのカップルは三日間ぐらい部屋から出てこないんですよね」  ヨシュアと太一は顔を見合わせる。 「な、ヨシュア、とりあえず出さねぇ? 俺、やってやるよ」  なんだか急激にヨシュアが欲しくなって、太一はベッドの上にヨシュアを押し倒した。  ズボンを引き下ろして、大きくなっているヨシュアのモノを引っ張り出し、思い切りしゃぶりついた。 「あっそんなやり方もあるのですか! 気持ち……いい……ああんっ」 「手でやるより気持ちいいだろ? やり方、覚えろよ!」 「はいっ……ああっ、気持ちよくてすぐ出そうですっ……こんなやり方があるなんて……」 「出していいからな!」 「ああっ! 出ますっ……出るっ!」  勢いよくヨシュアの出したものを飲み込んだ太一は、あれ?とヘンな顔をしている。 「ヨシュア……お前の精液って甘いな……」 「本当ですか?」  太一は不思議そうに、ヨシュアのモノから精液を絞り出すようにしてピンクの液体をぺろぺろと舐め回す。 「うん。さっき吸ったお前の血も甘くていい味だったけど、それより濃厚でまったりしてる感じ」 「それはぜひボクも試してみたい」 「おう。やってみろよ」  太一は自分のモノを引っ張り出すと、ヨシュアの手をそこに導いてやる。 「ボクはヘタクソかもしれないけど……」  ヨシュアはちょっとはにかんで、太一のモノを口に含んでみた。 「ヨシュア、手も動かしながらやってくれないか。そう、上手だぞ」 「ほんははんひへいいへふは?」 「くわえながらしゃべるなよっあっ……いい……イクっ! イクぞ!」  太一が出したものをノドで受け止めて、ヨシュアはゲホゲホとむせてしまったが、ピンクの液体が飛び散っているのを見てにっこりと微笑んだ。 「タイチのもピンクになってる。それに、すごく甘い。おいしいです」 「な? な? 甘いだろ?」 「ほんとです。血の味に似てる。もっと濃厚です」 「人間の精液はすっげぇマズいって聞いたことあるけどなあ」 「白いからじゃないですか?」  太一とヨシュアは笑いながらベッドでじゃれあって、キスをした。 「なあ、ヴァンパイアってキスしねぇの?」 「ねえ、日本人は出すときにイクって言うんですか?」  いろいろ人間とヴァンパイアの間には常識の違いがあるようなので、たくさん話をして慣れていくしかあるまい。  幸い時間は果てしなくあるのだし。 「ヨシュア、もう1回やろうぜ。今度はちゃんと抱きたい」 「はい。あの、それはヴァンパイアは男同士であまりやらないことですけど、ボクは嬉しいです……セックス」 「はは……人間だってあんまり男同士でやらねぇよ!」 「そうなんですか……ああん……タイチ……ああっ」 「ヨシュア……可愛い……俺のヨシュア……」  それから丸一日ヨシュアと抱き合っていたのだけれど、腹が減らないのが本当に不思議だ、と太一は思った。  食いしん坊の太一は、もう人間の食物が食べられないのがちょっとだけ残念だったけれど。  

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