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第24話 サプライズ

「驚いた……そっくりじゃねぇか。心臓止まるかと思ったよ」  隆二はまだ動揺しているようで、次の言葉が出てこない。 「ここにスッポンのイキチっていうメニューがあるって、ヨシュアに教えてもらったんだけど」 「あ、ああ。そうかヨシュアの兄ちゃんということは、吸血……いやヴァンパイアだったな。よし、ちょっと待ってくれよ」  隆二は冷蔵庫の方へ行こうとして、つまづいて転びそうになっている。  その動揺ぶりがおかしくて、ジョゼは笑いをこらえていた。  ヨシュアは隆二が太一と似ていると言っていたが、顔は似ていない。  太一は髪が茶色いし、肌もわりと白く、目がくりっとしている。  隆二は真っ黒の髪に日焼けした肌、切れ長の目だ。  隆二の方がオリエンタルなムードがある、とジョゼは思っていた。 「こいつがそうだ。ヨシュアはこれが気に入って毎日ここへ来ていた」  隆二はすっぽんの生き血のグラスを出すと、懐かしそうに目を細めてジョゼのことを見た。 「お前さんがここへ来たってことはあいつらと会ったんだな。元気にやってるのか? 太一とヨシュアは」 「元気です。毎日セックスしてますよ」  隆二は一瞬ジョゼの言葉に呆気にとられ、それから大声で笑い出した。 「お前……ジョセフとか言ったな」 「ジョゼ、でいいです。皆そう呼びます」 「そうか、じゃあジョゼ。お前は顔はヨシュアに似てるが、性格は全然違うようだな」  隆二は笑いがおさまらないようだ。 「みんなそう言います。ヨシュアは優しいからね」  ぶっきらぼうにジョゼがそう言うと、やっと隆二は笑うのをやめた。   「いや、俺はジョゼみたいなストレートな物言いの男は好きだぜ。まあ、それ、飲めよ」  タイチと同じことを言った……とジョゼは驚いて、思わず隆二の目を見つめてしまった。  オレはいつも口が悪いと言われるのに、この男も変わってる。 「ヨシュアは確かに優しかったが……お前はいい目をしてるな」  隆二はジョゼの視線に負けずに、まっすぐ挑戦的な目を向けてくる。  似ている……  確かにタイチも初めて会った時にこんな目をした。  顔は似ていないが、ヨシュアが似ていると言った理由がわかるような気がする。 「ほら、早くそれ飲んでみろ。そいつは俺のおごりだ。よく顔を見せに来てくれた。嬉しいぜ」 「じゃあ……」  ジョゼはちょっとおそるおそるその液体に口をつけてみる。  ブラッドリーフワインと赤ワイン以外のものを飲む時には、少し勇気がいるのだ。 「確かに……これはうまい」 「そうだろう、ヨシュアはこれが気にいっていたからなあ。ま、人間が飲むとあんまりうまいもんじゃないんだけどよ」  隆二は黙って赤ワインとフルーツの用意をした。 「ジョゼ、太一はちゃんとお前らの仲間になれたのか。迷惑かけたりしてないか?」 「大丈夫、タイチは人気者だ。皆喜んでいる」 「そうか……そいつは良かった。それを聞いて安心したぜ」  良かった、と言いながらも隆二は少し寂しそうな笑顔を浮かべた。  この様子ならあとで太一たちが来たらさぞかし喜ぶんだろうな、とジョゼは想像する。 「リュウジ……と呼んでもいいのか?」 「ああ、構わねぇ。ヨシュアの家族なら俺の家族みてぇなもんだ」 「じゃあ、リュウジ、オレ、聞きたいことがあるんだけど」 「なんだ。なんでも聞いてくれ」 「ヨシュアとタイチはどうやって恋人になったんだ? オレは正直ヨシュアがタイチを連れて帰ってきた時は驚いた」 「まあ、そりゃあ驚くだろうな。男同士だしよ。それは俺も正直驚いた。太一はゲイじゃねぇからな」 「ヨシュアも俺の知る限りじゃあ、ゲイではなかった」  隆二はジョゼのグラスにワインを注いで、自分のグラスにも注ぐと乾杯をした。 「まあ、運命のいたずらってやつかなあ。太一は最初っからヨシュアがヴァンパイアだということを知っていたみたいだな。俺は知らなかったが」 「ヴァンパイアは普通人間にそんなことは明かさないんだけどな」 「あの事故がなけりゃあ、どうなってたかわからねぇがな。太一が事故にあった話は聞いているか?」 「いや、知らない」 「そうか、太一は車の事故で死にかけたんだ。それで、俺がヨシュアに太一を助けてくれと頼んだ。お前らは治癒能力があるだろう?」 「治癒能力は確かにあるが、死にかけている人間は助けられない」 「ヨシュアも最初そう言った。だけどいちかバチかの方法がある、と言ってヨシュアは太一の病室へ入っていった。そのあとのことは俺は見てたわけじゃねぇ。だけどその後、太一は自分の足で歩いて出てきた。あん時の驚きは今でも忘れられねぇな……」  思い出すように隆二は遠い目をして笑った。 「ヴァンパイアは、死にかけている人間を助けるために仲間にするのは禁止されているんだ。そんなことをしていたらキリがない」 「でもな。太一はどのみちヨシュアと一緒になるつもりだったと、あとで言ってたよ。なかなか決心できなかっただけだと。事故があいつらを結びつけたのかもしれねぇな」  そういういきさつだったのか、とジョゼは納得する。  確かにそんなことでもなければ、気の弱いヨシュアは恋人を仲間にすることなど不可能だろう。  

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