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第27話 魂胆

「疲れたか? あそこにでもちょっと座るか」  隆二はジョゼを連れてオープンカフェに座った。  昨日イギリスから来たばかりなんじゃあ疲れているだろう、と思う。 「ちょっと待ってろよ」  自分にはコーヒーを買ってから、はて、と悩む。  固形物は食えないって言ってたし……ワイン以外は飲めないんだったな。  横にはアイスクリームが売っている。  いろんな種類があって、その中のショッキングピンクのアイスに目がとまる。  ラズベリーか。  フルーツは大丈夫だって言ってたな。  よし、これを買ってみるか。 「ほら、お前はこれだ」 「なんだ……コレ?」  受け取りながら怪訝そうな顔をするジョゼ。 「ラズベリーアイスだとよ。フルーツは大丈夫なんだろ?」 「ラズベリーか。食ったことないけど……」  おそるおそるジョゼはペロっと舐めてみる。 「うまいっ、これはうまいな」 「そうか、そりゃあ良かった。まったくお前らは食い物が難しいからなあ……どれ、俺にもひとくち食わせろ」  隆二がアイスをとりあげてかじりつくとジョゼはあわてて取り返す。 「オレのだぞっ! あっ! そんなに食うなって!」 「うるせぇな、足りなきゃもう1コ買えばいいだろ」 「だったら、リュウジも自分の分買って食えばいいだろ!」  仲良くじゃれているジョゼと隆二を太一たちは遠くから眺めていた。 「あいつら、結構仲良くやってるな」 「うん。ジョゼのあんなに楽しそうな顔、久しぶりに見た」 「あの様子なら放っておいても大丈夫だな」 「うんっ! ボクたちは遊びに行きましょう!」  第二関門も突破だ。  このあとは、ジョゼを隆二に押しつけて、太一たちは北海道旅行に行く予定なのだ。  仲良くしてもらわないと困る。  夕方まで別行動をして、遊園地を出ると近くの居酒屋にはいった。  ヴァンパイア3人はそうでもないが、隆二は腹が減るのだ。 「ああ~楽しかったねえ」 「オレはそうでもなかった」  ヨシュアはご機嫌だが、ジョゼは遊園地はそれほどお気に召さなかったようである。  ワインとフルーツと隆二の分の食べ物だけを注文する。  ジョゼはアイスが気に入ったのか、フルーツシャーベットを見つけて嬉しそうに注文した。 「あっジョゼ、何を注文したの」 「フルーツアイス。うまいぜ。ヨシュアも食べてみろよ」 「へーそんなの、ボクは知らない」 「昼間リュウジが買ってくれたんだ」  ジョゼはちょっと照れたような嬉しそうな顔をした。  あれこれ話をしていると、ヨシュアが太一を肘でつつく。  早く話せ、ということだろう。  ここはうまく話をつけないとな。 「あのさあ……実は隆二にちょっと頼みがあるんだけどな」 「俺に頼み? なんだよ、あらたまって」 「実は俺とヨシュアはこれからあちこち旅行に行きてぇんだけど、その間ジョゼを預かってくれないか?」 「ジョゼを?」  驚いたのはジョゼだ。  そんな話は聞いてない。  ハメられた……  ヨシュアの魂胆は丸見えだ。  ヨシュアをにらむと、下を向いてクスクス笑っている。 「まあ、そりゃあ構わねぇが……預かるっていってもウチは狭ぇぞ」 「寝られたらいいよねっ、ジョゼ」  ヨシュアが代わりに返事をする。  ジョゼは思わず向かい側に座っているヨシュアの足をけっ飛ばした。 「いてて……もう、何するんだよ、ジョゼ」 「まあ、ジョゼ。こんなやつらの新婚旅行について行ったってアテられるだけだぞ。あきらめろ」 「ちぇっ、お前ら最初からそのつもりだったのかよ」  ふくれているのはジョゼだけだ。    だけど、ジョゼは予想外の展開に内心ドキドキしていた。  明日から、隆二と二人きりになる…… 「旅行ってお前ら、どこへ行くんだよ」 「えーっと、最初は北海道に行って、それから九州にも行って、温泉はいるんです」 「そりゃあ1週間以上かかるな」 「10日ぐらいで戻ってくる予定です。そのあと、ボクと太一はイギリスに戻る用事があって」 「なんだよ?用事って」  ジョゼが不思議そうな顔をする。 「うん……なんか、ボクたちのお披露目パーティーみたいのがあるんだって。パパが帰って来いって」 「オレは聞いてないぞ」 「ジョゼは別に構わないんじゃないかなあ。もしそのまま日本に残るんだったら、ボクがパパに言っておくし」 「バカ言え。お前のパーティーにオレが参加しないワケにいかないだろ」 「まあ、いいじゃない。その時決めれば。帰りたかったら一緒に帰ったらいいしさ」  このままだと、ジョゼは太一とヨシュアに日本に置き去りにされそうだ。 「まあ、話はわかった。なら、今日からジョゼはウチで預かる」 「よろしくお願いします! ほら、ジョゼもお願いしなよ!」 「……よろしくな」  なんか納得できないという顔をしているジョゼの肩をポンと叩いて、隆二は笑った。 「毎日スッポンのイキチ飲ませてやるからそうムクれんなよ」 「わぁ! いいなぁ! うらやましい」  ヨシュアはそれだけは本当にうらやましそうな顔をした。  

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