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第35話 愛してる

「リュウジ……本気なの……?」 「惚れた、って言っただろうがっ! 男に二言はねぇ」  ホレタってそういう意味だったのか……とジョゼは今更のように思っていた。  2階に上がって、いつもふたりで寝ていた狭い部屋で向き合った。  休業が続いているせいか、携帯が何度も鳴るので、隆二は電源を切ってしまった。  何も言葉にできなくて。  ただ何度も唇を重ねて、抱きしめあって。  ジョゼの目から、涙がボロボロとこぼれては、畳の上に落ちた。 「泣き虫め……」  もう無理だ。  離れるなんて。  こんなに純粋に自分のことを思って泣いているのに、手放せるわけがない。   「俺がお前の仲間になるには、どうしたらいいんだ」 「それは……オレがリュウジの血を吸うんだ」 「そうか、そりゃあそうだな。俺の質問が間抜けだった」  隆二は声を上げて笑った。  吸血鬼にそれ以外の方法などあるわけがない。 「じゃあ、気が変わらねぇうちにさっさとやってくれ」 「……横になって。倒れると危ないから」  ジョゼは覚悟を決めた。  オレにそこまで言ってくれる人間は、多分もう現れない。  それに、リュウジはタイチと一緒にいたいのだろう、と思う。  それなら、オレがリュウジを連れていく。 「倒れるって……死ぬんじゃねぇだろうな?」 「大丈夫。少し眠るだけだから。ずっと側にいる」  ジョゼは横になった隆二の左手を握った。 「オレ……ジョセフ・ブラッドはリュウジ・ヨシナガに生涯忠誠を捧げることを誓う」 「ああ、俺も誓ってやらぁ」  隆二はジョゼを見上げて笑顔を浮かべた。  ジョゼの瞳からぽとぽとと涙が落ちてくる。 「そんなに泣くな」  隆二が笑いながら涙をぬぐってやると、ジョゼは心を決めたように深呼吸をした。 「目を閉じてて。すぐに終わるから」 「わかった」  ジョゼは隆二の唇に軽く口づけてから、首筋の頸動脈を唇で探す。  波打つような隆二の血液の流れを感じる。 「リュウジ……愛してる……」  軽い痛みのあと、隆二は身体から急速に力が抜けていくのを感じた。  大丈夫だよな……太一だってぴんぴんしてるんだし。  意識が遠のいていく……  ジョゼ……  ジョゼを抱きしめていた隆二の腕が、力なく床に落ちた。  ◇ 「とうとうジョゼ、戻ってこなかったね……」 「いいじゃねぇか、別に。今頃仲良くやってるんだろ」  太一とヨシュアは、ジョゼを置いてイギリスに戻ってきた。  今日はブラッド家のパーティーである。    何百人もの親族が屋敷に集まってきている。  たまにこういう集まりをして新しいメンバーを確認しないと、誰が親戚なのかよくわからないことになるのだ、とアレックスは言った。  太一はあれから気になって、何度か隆二に電話を入れてみた。  しかし携帯も店の電話もつながらなかった。  電話がつながらない、ということは店を閉めているということだ。  ジョゼと二人でどこかへ出かけたのだろうか。  それとも……  二人の関係がどこまで進んでいたのかはわからないが、太一は隆二がジョゼに惚れて仲間になる選択をするのではないか、という予感がしていた。  ジョゼ、頑張れよ、と心の中で応援する。    太一だって本音を言えば、ヴァンパイアの中に一人でいるのは寂しい。  隆二が仲間になってくれたら……と思う気持ちはあった。  隆二が死ぬ時には見送る覚悟はしていたが、もし一緒に生きていけるのなら嬉しい。  わがままかもしれないけれど……  アレックスに紹介されて、太一は新しいブラッド家の一員として、ヨシュアと一緒に挨拶をしていた。  周囲を見回してみると、集まっている親族の9割は男だ。 「ヨシュア、えらく女が少ないんだな?」 「そうなのです。ヴァンパイアは女が少ないです。10人に1人しか生まれません」 「そうなのか……まるで逆ハーレムだな」 「だから、男は結婚相手を見つけるのが大変なのです」  ちらほらと見かける女ヴァンパイアは皆よく肥えている。  豪華なドレスがはちきれそうだ。  きっと男の血をたんまり吸っているのだろう、と太一は想像する。  恐ろしい……  太一は初めてヨシュアのママを紹介された。  やっとフランスの買い物から帰ってきたところらしい。  メリッサ、女優のように美しいママだ。  ヨシュアがきれいな顔をしているのは、このママに似たんだろう。  

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