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第36話 幸せ ※本編完結

 アレックスとメリッサと太一たちが4人で談笑していると、突然扉がバタンっと開いた。 「ジョゼっ!」 「隆二……」  ジョゼの後から現れたのは、スーツ姿の隆二だ。  ジョゼは隆二を仲間にしたのか……?  それとも連れてきただけか……?  驚いて見守る太一とヨシュアの前を通りすぎて、ふたりはアレックスのところへ駆け寄った。 「パパ、遅れてごめんなさい。会わせたい人がいるんです」 「ジョゼ、お前もか……」  アレックスは状況を察してため息をついた。  ジョゼまでソッチの道へ走ってしまったのか。   「紹介しておくれ。その人も日本人か?」 「そうです。オレのパートナーになってくれた、リュウジです」 「あの……俺は、ジョゼをいただきに来ました」  突然現れたもうひとりの日本人に気づいて、周囲はざわざわし始めている。 「そうか。我々は新しい家族を歓迎する。よく来てくれた」  アレックスは諦めて、笑顔を浮かべながら隆二に握手を求めた。 「しかしなあ……お前らはどこまで仲良しなんだ、ヨシュア、ジョゼ」  ため息をつくアレックスにママが反論する。 「あら、いいじゃない。タイチもリュウジもハンサムじゃないの」 「しかし、孫の顔が……」 「リュウジの子供だったら産んであげてもいいわよ」  ママの台詞にアレックスは冗談じゃない、と渋い顔をする。 「リュウジさんとママの子供だと、ボクからすると弟なのか甥なのか……」 「ヨシュアのバカ! そんなこと真剣に考えんなっ」  ジョゼが真剣に怒っているので、ヨシュアは笑った。 「ジョゼ、よかったね。心配してたんだ」 「あ、ああ……まあな」  ジョゼは突然照れたように、隆二のそばに寄り添った。  ヨシュアが隆二に会わせてくれたことに、ジョゼは心から感謝していた。   「やっぱりここまで来たか」  太一がからかうように隆二に言うと、隆二も照れ臭そうに頭を掻いた。 「お前らと一緒に何百年でも生きてやらぁ!」 「嬉しいよ、本当はひとりで心細かったんだ」  ジョゼを隆二に会わせようと言い出したのはヨシュアだったけど、本当に正解だったと思う。  ヨシュアにとってジョゼが大事な兄弟であるように、太一にとっては隆二がたったひとりの兄貴なのだ。 「ところでよぅ……太一、お前も精液ピンク色か?」  隆二が太一の耳元でぼそぼそと聞いてくる。  ヴァンパイアになりたての隆二には聞きたいことがたくさんあるだろう。  ヨシュアとジョゼもなにやらこそこそと内緒話をしている。  今夜はつもる話で飲み明かしそうだ。    ヨシュアと太一のためのパーティーだったのが、ジョゼと隆二も加わって、4人のためのパーティーになった。  宴に集まった女ヴァンパイアたちは、スッポンのイキチが美容にいいらしい、という噂話で日本へのツアーを計画しているようだ。  そして、その晩ブラッドの親戚の中に密かに10組ほどのゲイ・カップルができたらしい。  それから数百年に渡って、ブラッド家はゲイの一族とヴァンパイアの間で有名になっていくことをこの時誰が予想しただろう。  ヨシュアと太一、ジョゼと隆二。  ヴァンパイアと元人間カップルは、人騒がせで、幸せだった。 【第3章 隆二&ジョゼ ~End~】

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