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第41話 ★番外編SS3★ 鬼ごっこ

「やっ……やだっ! タイチってば! あとでっ」  ヨシュアがバタバタと首筋を押さえて逃げ回っている。 「絶対ダメっ!」  ジョゼは襟をきっちり締めて、隆二とにらみ合っている。    最近恒例のこの鬼ごっこは、いつも元人間2人が鬼である。  元人間に捕まったら、血を吸われてしまう情けない吸血鬼2人なのだ。  ジムから戻った元人間2人は、腹が減っているのでいつもこの展開になる。 「ヨシュア、つ~かま~えたっ!」 「あっ、いやっ! やっ……ああっ……あああぁんっ……」  太一はニヤっと隆二に笑うと、身体から力が抜けてしまったヨシュアを抱き上げて隣の寝室へ連れていってしまう。 「今日は負けたか」  隆二もやや遅れてジョゼを抱きすくめると、ソファに押し倒す。 「リュ……リュウジっ、嫌だってば! ダ、メ……あっ……あああ……」  びくびく身体を震わせて、ジョゼもうっとりとした表情で大人しくなる。 「あっあっ、タイチっ……気持ちいいっ……」  隣の寝室からヨシュアの声の続きが聞こえてくる。 「やれやれ、あっちはセックス始めちゃったか」  隆二が呆れたようにため息をつくと、ジョゼが赤い顔をして隆二に抱きついてくる。 「リュウジ……オレもいい?」 「いいぞ、あいつらは当分出てこないだろ」  ジョゼはヨシュアたちが寝室から出てこないのを確認して、照れながら隆二の首筋におずおずと唇を寄せる。  隆二は目を閉じてジョゼをぎゅっと抱きしめると、軽い痛みと強烈な快感につかの間酔いしれた。  ヴァンパイアの営みは普通ここで終わりなのだが、相手が元人間だとその後もキスをしたり、突っ込んだり、射精したり、いろいろ忙しい。  隆二とジョゼのカップルはそれほどでもないが、太一とヨシュアの方は毎日昼も夜も忙しいようだ。 「さて、ここにいても仕方なさそうだから、戻るか」 「うん……」  ジョゼはまだトロンとした顔をして、隆二の腕にしがみつくように立ち上がる。 「ねえ、リュウジ。オレにも空手ってできないかな」 「やってみたいのか? だったら、一緒にジムに来たらいいじゃねぇか」  最近、太一と隆二はジムの空きスペースで空手の乱取りをしている。  黒帯のふたりは乱取りをしているだけで東洋のアクションスターのように見えるらしく、ヴァンパイアの中にファンが急増中だ。  中には教えて欲しいと言ってくる者もいて、ジムでは太一と隆二は人気者なのだ。 「うーん、でも……ヨシュアが嫌がるだろうなあ」  ヨシュアはケンカが大嫌いなので、空手など言語道断である。 「じゃあ、部屋に戻ってから俺が教えてやるよ」 「本当?」 「ああ。ジョゼの分の空手着も取り寄せねぇとな」  部屋に戻って隆二は、簡単な受け身をジョゼに教えようと思ったのだが、どうも床がフローリングだと危ない。  頭を打ちそうになったジョゼをあわてて抱きとめて、隆二はついでに唇にちゅっとキスをした。  ジョゼは隆二のその身のこなしがかっこよくて、ぼーっとしてしまう。 「やっぱり下がタタミかマットじゃないと危ねぇな」  周囲を見回して隆二はどうやって練習しようか考え込んでいたが、ジョゼは全然違うことを考えていた。  リュウジは他の人にもこうやって教えてるんだろうか……  危なかったら抱きとめたり、唇が触れそうになったりするんだろうか。  ジョゼは太一や隆二が他の人に空手を教えているところを見たことがなかったので、急に心配になってしまった。  もしそうだったら、ヨシュアだって心配なはずだ。  これは一度ヨシュアと一緒にこっそり偵察に行ってみよう、とジョゼは思った。 「今日はもういい。今度ジムに見学に行ってみる」 「おう、それがいいな。ここじゃやっぱりちゃんと教えてやれねぇわ」  翌日太一と隆二がジムへ出かけてから、さっそくジョゼはヨシュアに相談してみる。  ヨシュアは空手には興味がないのだが、ジョゼの話を聞いているうちにそれは太一が危ない、と思い始めた。  太一は誰にでも優しいし、面倒見がよい。  もちろん、それは隆二も同じである。  誰か他のヴァンパイアが惚れてもおかしくない!、と2人は立ち上がる。  そして行ったことのないジムに2人でこっそり偵察に出かけた。  裏庭に回って窓の外からのぞくと、ちょうど太一と隆二が乱取りをしている姿が見えた。  かっこいい……  空手に興味のないヨシュアも熱心に見惚れている。  太一たちの周囲には十数人のヴァンパイアが取り巻いて、拍手をしたりしている。  どうやら太一たちの弟子は日に日に増殖しているようだ。  皆、自分で取り寄せているのか、ヴァンパイアたちもちゃんと空手着を着て白帯を締めている。  そのうちヴァンパイアたちは適当に二手に分かれて、隆二と太一相手に一人ずつ乱取りを始めた。  隆二が倒した相手を優しく抱き起こしたり、お互いに襟に手を掛けて抱き合うのを見て、ジョゼは胸がムカムカしてきた。  ヨシュアの方はもっと悲惨な思いをしていて、ヴァンパイアたちは皆太一の襟元がはだけて丸見えになっている吸痕に目が釘付けになっている。  中には本気で太一につかみかかっていく者もいるのだが、道着がはだけて太一の乳首が露わになると、全員の視線がそこに集中する。  ヨシュアは見ていて思わず叫び声をあげそうになった。  今のは絶対わざとだっ!と怒りがこみあげてくる。  どうやら集まっているヴァンパイアは全員ゲイで、隆二か太一のどちらかが目当てだとしか思えない。

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