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第49話 ★番外編SS5★ そうだ、京都へ行こう

 ジョゼはドレスを着るのは嫌だ、と言っていたな……と隆二は思案している。  それに、隆二もドレス姿のジョゼにはあまり興味がない。  女装ならヨシュアのを見たので十分だ。  顔が似ているのだからどうせ似たような感じになるだろう。  どうせなら普段のジョゼの姿を撮る方がいい。  待てよ……  着物だったらなあ……ジョゼに似合いそうなんだけどなあ。  艶やかな舞妓のような着物を着せたら、ジョゼのような端正な顔だと映えるるだろうなあ、と想像する。  隆二はジョゼがパソコンに向かっている時を見計らって、声をかけた。 「なあ、ちょっと検索してほしいことがあるんだけど」 「なんだよ」 「マイコ、って調べてみてくれねぇか? キョウト、とか一緒に入力したら出てくると思うんだが」  ジョゼが検索した結果を見ながら、舞妓の写真が掲載されているホームページを見つけ出す。 「これ、着物だよね。キレイだな」  ジョゼは純粋に芸術的な民族衣装だ、と思う。  色とりどりの着物は世界でもなかなかお目にかかれない美しさだ。 「ジョゼ、お前、こういうの着るの嫌か?」 「でも、これ、女用の着物じゃないの?」 「そうなんだが……まあ着物は男も女も形はそう変わらねぇ。帯がちょっと女の方が派手なんだ」 「なるほど。帯が違うのか」 「でもよぅ……俺は、こういう派手なやつをお前に着せてみたいんだよな」 「オレがこれを着るの?」 「嫌か?」  ジョゼはちょっと考えてみるが、別にドレスを着るほど嫌じゃない。  男も女も形は同じに見える。  それに着物にはちょっと興味もある。 「別に、嫌じゃない。着たことないし」 「ほんとか?」  隆二は途端に嬉しそうな顔になる。  ジョゼは隆二は日本の民族衣装が恋しいのだろう、と思った。 「着てもいいけど……イギリスじゃあ手に入らないんじゃないかなあ」 「京都、行こうぜ。京都! 前回はジョゼをどこにも連れていってやれなかったからさあ」  京都には寺や神社がたくさんあって、観光名所だということぐらいはジョゼも知っている。 「京都に行って、着物買うの?」 「そうじゃなくってよ。買うと高いから貸してくれるところがあるんだ。好きな着物選んで写真だけ撮れるところがあるって聞いたことがある」 「へえ……それは面白そうだ」  隆二が言っているのは、京都にある映画の撮影所のことである。  昔、修学旅行で行ったことがあるのだ。  時代劇に出てくるような格好をして、写真を撮らせてくれるところがあって、お姫様になったり岡っ引きになったりできる。  そこでジョゼをその気にさせて、気に入ったら着物を買えばいいのだ。  そして、あわよくばビデオ撮影に持ち込もう、と隆二は画策している。 「じゃあさ、ヨシュアも喜びそうだから誘ってみる」 「おぅ。あいつらも暇だから絶対一緒に行くさ」  もちろん、ヨシュアと太一も賛成して、すぐにでも行こうという話になった。  太一にはジョゼのビデオを撮りたいという隆二の下心は丸わかりである。  観光に行けばビデオを回していても不自然じゃない。  そして、四人組はまたまた日本旅行に出かけることになった。    京都についた四人は、まず映画村に向かった。  あちこちで時代劇の芝居をやっているのを見て、ヨシュアとジョゼはご機嫌である。  写真館を見つけて入ってみると、千円で好きな衣装を着てポラロイドで写真を撮ってくれるという。  太一とヨシュアはさっそく岡っ引きと村娘の衣装を着せてもらって、写真を撮って喜んでいた。  しかし、そこには隆二の思っているような舞妓の衣装がなかったのだ。 「どうしたの? リュウジの気に入るようなのは見つからない?」 「うーん、そうだなあ……もうちょっとちゃんとしたやつ、着せてやりたいんだよなあ」 「実はさ、オレ、ちょっと調べてみたんだけど」  ジョゼが差し出したのは、映画村の近くにあるきちんとした写真館で、少し値段は高いが舞妓体験ができる、というものだった。  インターネットで調べて、プリントアウトして持ってきたようである。 「そうそう、こういうやつだ。明日はここに行こうぜっ!」  映画村でさんざん遊んで、その日は近くのホテルに泊まった。  ジョゼに教えてもらって、隆二もビデオの扱いは覚えた。  そして、電話で予約をして翌日その写真館に行ってみることになった。 「どれにしようかなあ……」  ヨシュアとジョゼは熱心に見本を見て舞妓の着物を選んでいる。  男でも着せてくれるのか?と聞いてみたら、受付の人は笑いながら最近はそういう男の人も多い、と答えた。  ヨシュアとジョゼが容姿端麗な外国人なので、張り切って着付けをしようと、メイク担当の人も控えている。  日本の男がやると不気味でも、外国人だから許される、というのもあるのだろう。  一緒に見本を見ていた隆二は、ふと、ある写真に目をとめる。 「これ……着てみねぇか?」  隆二が指さしたのは、白無垢だ。 「真っ白だよ? これがいいの?」 「これは花嫁衣装だから、真っ白なんだよ」 「そうか……ウェディングドレスみたいなものか」 「俺たち、結婚式してねぇんだから、写真だけ撮らねぇか?」 「そしたら、リュウジはどれ着るの?」 「俺は紋付き袴だ」  男性用の衣装を見て、ジョゼは隆二がそれを着ているのを見たいと思った。 「わかった。じゃあ、そうする」 「よし、じゃあ、さっそく撮ってもらおうぜ」  受付の人に結婚写真を撮りたい、と言うと笑いながら了承してくれた。  別々に着替えて、スタジオに移動して撮影するようだ。 「ヨシュア! 俺たちも結婚写真撮ろうぜ!」 「うんっ、あの白いやつ、着たらいいの?」 「いや、ヨシュアは赤いの着ろよ。絶対似合うから」  太一の希望で、ヨシュアは赤い打ち掛けを着ることになった。  真っ白よりも華やかで色々種類があるので、ヨシュアはご機嫌だ。  十二単の一番ゴージャスな着物をヨシュアは選んだ。  

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