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第53話 ★番外編SS6★ Change

 京都から帰って、アレックスとメリッサに結婚写真を見せると、ふたりはたいそう喜んだ。  息子たちがこんなに美しい着物姿になるとは、想像もしていなかったようだ。  そして、ヨシュアとジョゼの着物姿をみんなにも見せたいから、パーティーを開こうと言い出した。  わざわざ親戚を集めるほどではないが、屋敷にいる者たちを集めてお披露目したいと言う。  屋敷にいる者たちは、基本的に暇なので、パーティーが好きだ。  今や人気者の太一と隆二の和服姿も話題になるだろう。  思いついたら気の早いパパとママは、すぐにやろう、と言う。  ヨシュアとジョゼも、着物を着るのは嫌ではないので、賛成した。  ジョゼは密かに、また和服姿の隆二に襲われたい……などと妄想してしまった。  そうと決まれば、さっそく4人は和服を着る練習をしてみた。  着付け担当は、一番慣れている隆二である。  襦袢さえきっちり着れば、着物を羽織って、着脱式の帯で止めるだけだ。  多少着崩れて引きずっていても、それはそれで風情がある。  カツラはかぶるだけだし、メイクは意外にもジョゼが器用にできるようになっていた。  彫刻に絵付けをするのとたいして変わらない、と筆でキレイに仕上げてしまう。  何度か練習をしているうちに、ヨシュアもジョゼも自分でさっさと着れるようになった。  太一も自分で帯が結べるようになったようである。  そして、パーティーの当日がやってきた。  「そろそろ行くか、ヨシュア……じゃなかった、ジョゼか」  どうやら、カツラをかぶって二人とも着物を着ていると、ヨシュアとジョゼはますます瓜二つのようである。  メイクもジョゼが両方やっているので、顔はそっくり同じだ。  カツラのせいで、髪型でも見分けがつかない。  着物の柄を覚えておかないと、間違えてしまうのだ。  ヨシュアとジョゼは練習中に着物を交換したりしていたので、太一も隆二も見間違えては混乱している。 「ヨシュアが赤。ジョゼが緑。間違えないようにしないとな」  出かける前に太一が確認している。 「ごめん、ボク、トイレに行きたくなった。先に行ってて」 「そうか? 早くしろよ」  太一と隆二は皆を待たせているので、先に行くことにする。  太一たちが部屋を出ていくと、ヨシュアはトイレに行かずに、ジョゼに悪巧みを話した。 「ねえ……ジョゼ。着物、急いで交換しようよ」 「交換? どうして。ヨシュアは赤い方が似合うのに」 「太一たちをあとで驚かせようよ。絶対見分けつかないって」 「オレがヨシュアのふりするのか?」 「そう。先にバレた方が負け」  ヨシュアはいたずらっこのような目をして、ジョゼに早く脱げ、と言う。  バレないかなあ、と思いながらも、バレたらバレた時だ、とジョゼも悪巧みに乗ってみた。  そして着物を交換して、急いでパーティーの会場へと向かったのである。 「ヨシュアっ、遅いぞ。何してたんだ」 「オレ……じゃなくて、ボク、ちょっと緊張してトイレが近くて」 「ほら、行くぞ」  太一が偽ヨシュアの手を取る。 「ジョゼ、襟が少し崩れてる」  隆二が偽ジョゼの襟を優しく直してやる。  どうやら、ふたりとも全然気づいてないようである。  偽ヨシュアと偽ジョゼは目配せをして、クスっと笑った。  会場にアレックスとメリッサも現れたが、この二人すら全然気づいていない。  もともとアレックスとメリッサもこのふたりをよく間違えるのだ。 「ヨシュア、今日はなんか元気ないな。腹でも痛いのか?」 「ううん……タイチがかっこいいな、と思って」 「何言ってんだよ。ヨシュアが一番さ。赤い着物が本当によく似合う」  タイチに褒められて、ジョゼは複雑な気分だ。  赤いのが似合う、と言われているオレはジョゼだ、とバラしてしまいたくなる。 「ジョゼ、今日はご機嫌だな。そんなにはしゃいでいるのはめずらしいじゃないか」  隆二に言われて、偽ジョゼはあわてて笑顔を引っ込める。  そう言えば、本物のジョゼはこんなに笑顔を振りまいたりしないんだった。  危ない、危ない……  バレないように、偽ジョゼはあまりしゃべらないようにする。    こういう時、ジョゼは無口なので助かる。  隆二も人前ではあまり話しかけてこない。  ただ、偽ジョゼの手を握って、側にいるだけである。  リュウジさんってこういう時、男らしくてかっこいいよな、と偽ジョゼは密かに思っている。  太一だと、はしゃいでヨシュアを連れ回して自慢するだろう。  実際、太一は全然気づかずに偽ヨシュアを連れて、あちこちの顔見知りのところを回っている。  偽ヨシュアは大変だ。  見物人たちも、ヨシュアとジョゼが入れ替わっているのは全然気づいていない。  太一と一緒にいる方がヨシュアだろう、と勝手に思い込んでいるのだ。  あまりに誰も気づかないので、ヨシュアとジョゼは言い出すタイミングを失ってしまった。  本当は途中でどちらかが気づいて、サプライズになるはずだったのだが、気づいてもらえないと自分からは言いだしにくいものだ。  結局、パーティーが終わるまで誰も気づかずに済んでしまった。 「ヨシュア、疲れたな。早く帰ってビデオ撮ろうぜっ」  どうやら、太一は今日もハメ撮りをするつもりだな、と偽ヨシュアは笑いをこらえる。 「ジョゼ、疲れたか?今日はあまりしゃべらなかったようだが」 「ううん、大丈夫。ねえ、今日もビデオ撮るの?」 「え? ああ……まあ、お前が良ければな」  照れている隆二を見て、偽ジョゼはしめしめ、と思っている。  本物のジョゼのために、隆二を煽ってみたのだ。  太一も隆二も早くふたりきりになりたいので、それぞれ偽物を部屋に連れて帰ろうとする。  着替える時にばらそうと思っていたふたりは、困ってしまう。  おい、どうするんだよ、と偽ヨシュアが偽ジョゼに目で助けを求めている。  

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