***** 　 　･･･ところが返ってきたのは誓いの言葉などでなく。 　「ん－、じゃあもし誓わないっていったら」 「――な、テツヤ？！」 「ふふ。いえ、あくまでもしも･･･ですよ？　そしたらどうします？」 　ぽすっと後頭部を肩にのっけて、好奇心に満ちたきらきら輝くまん丸目で見上げながら･･･の、試すように仕掛けられた問いかけであったのだが。 「まったくお前ときたら･･･だがそうだな･･･さしあたって仕事（作家業）を質草にでもするかな」 「おっと、それは困りましたね。ですが･･････もしそれでもイヤだっていったら？」 「そうだな。お前の（仕事）でもダメならオレのを･･･赤司の家も、仕事も、立場も責任も。何もかも捨てて黒子先生のヒモにでもなって･･･オレ自身がお前の枷になる･･･ってのはどうだい？」 　その一見ただの言葉遊びにしか思えぬ問いかけの中に透ける本音――赤司征十郎ほどの男がその狂気にも似た愛情を一心に寄せるのはいったい誰に対して、なのか。 そしてその深さと重さがどれほどのものであるのかを、飽きずに何度だって欲しがる欲張りな彼のため、言葉を尽くすつもりが･･････。 「ボクが赤司君を･･･いいですねそれ」 「なんだやけに嬉しそうだな･･･けどヒモだよ？」 「（ボクがいくらそれでいいって言ったところで、決して周りが許さないことはわかりすぎるくらいわかってるけど、でも）かわまない。それで君を･･･赤司征十郎を独占できるなら」 「へぇ･･･そんなにもテツヤはオレを独占したいの」 「･･･知ってるくせに」 　――だってボクゆうべ言いましたもんね？　･･･それにあの本が（*著書「魍魎の棲家」のこと）その･･･君に宛てたラ、ブレターだったってことにも気づいてますよね？　 だからこそ今こんなことになってるんですもんね？　 ･･･なんてほわり頬染めて伏し目がちにはにかんでみせる――昨晩からなおも続く怒涛のサービスぶりに、せっかく･･･ようやく大人しくなりかかっていた下半身を再び臨戦態勢にしながら。 　今日も今日とて人事を尽くしまくった緑間が、第三クオーター終了間際･･･勝ち越し弾となるハーフコートショットを、さも当たり前みたいに淡々と決めてみせたのを――俯いた視界でぼんやり捉えつつ･･･。 「ああ。もちろん気づいていたさ」 　気づいていたからこそ、お前に去られた事実は相当堪えたし･･･だからこそたとえ何年かかっても必ず見つけ出して。そしてお前が望んだ通り･･･オレたちきりしか存在しない世界をこしらえ、閉じ込めてやるって。 そしてどれほどテツヤ･･･お前の存在そのものがオレの原動力となっていることを。 テツヤが支え癒してくれるからこそ、グループ企業のトップとしての･･･生半可でない責任やプレッシャーにも打ち勝てるし、だからこそ二度とお前を失うわけにいかないんだと･･･。 「次失ったらきっと、今度こそオレは正気でいられなくなる」と。 「それほどお前を愛してるから･･･」と――瞬く間にぶり返した熱情に任せて畳みかけながら、大きな手でふわり･･･黒子の両肩に手を添えたかと思いきや。 　突如、恋人つなぎにしていた手を振りほどかれたことを疑問に思う間もなく。電光石火の早業で･･･気づいたときにはとっくにマットレスの上に身体を組み敷かれ、横倒しで重なったままだった膝を持ってカパッと開脚させ――。 その勢いで露わになった柔い内ももを･･･その掌に吸い付くような肌の感触にますます欲望を滾らせつつ、「テツヤ愛してる」とうわ言みたいに繰り返しては･･･。 その終着点となる股間にこれみよがしにぐいぐい･･･勃起を押し付け。 そしてトドメとばかり「もうこれ以上待てない、限界だ」、「だから早くナカに入れて」と仰向けに転がした身体に覆いかぶさって、一段と低くなった掠れ声を耳朶に吹き込んで迫るころになってようやく。 　･･･「え？　わ、ちょ、赤司君？！」と慌てたような声を挙げながら、自分より20㎏以上も重い身体をどうにか押しのけようと悪あがきする彼が、この――黒子テツヤだけが聴く権利をもつ、蠱惑的な囁きにめっぽう弱いのを承知の上で―― 　「うー･･･もう！　まだ試合ちゅ･･･だし、緑間君がみて･･･」 　その証拠にほら･･･。 「見てるって･･･だが緑間がいるのはボストンで、それに第一これ録画だよ？」 「でも、イヤ･･･なものはイヤ･･･って、こら！」 　性懲りもなくバスローブと下着越しのドライハンプ（疑似セックス）を続けながら･･･口をついて出る拒絶を見事なまでに裏切って、うっかり半勃ちまで育った仮性包茎を目でも楽しむべく（ウブ色の先っちょがぴょこんと顔を出した様がいたくお気に入りな魔王さまではある･･･が、なんだかんだ萎えていようが完勃ちしていようが、要は･･･それが最愛の彼に属するものであればすべて等しく･･･食べちゃいたいくらい、愛しくて可愛いくて仕方がなかったりする、筋金入りの黒子テツヤフェチだったりする）。 このどさくさ紛れて下着を脱がせてしまえと目論んだ左手を･･･『調子に乗るな』とでも言うように、ぺちぺち叩いて咎める黒子に。 「けどココはもうすっかりその気になってるが･･･？」 　と異議申し立てしつつ･･･。 「っ！　ぅぁ、ん･･･でも、ダメッ」 「じゃあテレビ切ればいい？　――アレク〇、テレビ切って」 　ならば･･･そっちがダメならこっちとでもいうように――ボクサーパンツの足ぐりに手を突っ込み。感覚が敏感な鼠径部や、腰骨のあたりを煽り立てるように撫でまわしつつ。 　それでもいやいやと首を振り、とっくにままならなくなった手で不埒な侵入者を押し返そうとする･･･諦めの悪い彼をいよいよ陥落させるべく。 　弱点を知り尽くした的確過ぎる攻めについつい気を取られ、マルチタスクをこなし難くなっているのをこれ幸いとばかり･･･いそいそとスマートスピーカに指令を下し。 「なんで、これ･･･から･･･（一点勝ち越していよいよってときに、何勝手なことしてくれてんですかと言いたいらしい）」 「なら続きは昼食の時にでも･･･ね？」 　そして次から次へ･･･プログラムが目白押しのハーフタイムショーが最高潮に達する目前･･･賑やかな歓声や色とりどりの照明、大音量の音楽に取って代わった静寂と･･･レースカーテン越しに差し込む午前の陽射しが織りなす、光のペルルに乗せて――･･･。 （*シャンパンを注いだ際にグラスの底から立ち昇ってっくる気泡のこと＝フランス語で真珠） 「無茶しない･･･ン･･･ちゃんと加減する。約束･･･」　　　　 「ン･･･まったく。とんでもない･･･ン･･･甘ったれ、です、」 「お前にだけ」 「ン･･･あたりまえ･･･ン、です」 「じゃあ･･･！？」　 「はぁ～･･･ン、もう。仕方ない、ン･･･な･･･」 　一つ言葉を紡ぐたびごとに軽快なリップ音を響かせながら、ついばむように口づけては･･･本社最上階（社長室）に巣食うラスボスと化したウィークデーの彼からは、到底想像もつかないほど子ども返りした･･･その見事な駄々のこねっぷりでもってこれでもかと･･･パートナーの母性本能をくすぐり、絆し･･･。 　あくまで渋々といった体ではあっても。お許しが出るまでの過程がどうだろうが、とにかく“よし”と言ってもらえたからには。 『ここまでくればもうこっちのもの！　遠慮なく行かせてもらう！』とでもいうように･･････。 　「！　テツヤ、テツヤ、愛してる･･･」 「はいはい･･･」 　ニコニコというべきかニヤニヤと表現すべきか。とにかく嬉々とした手つき、かつ迅速で無駄のない動きで――とっくに意味をなさなくなっていたバスローブの腰ひもをほどき。 最後の砦として死守されていたボクサーパンツを奪い取り。 　ペチと腹を打った途端、充血した先端から粘り気のある雫をトロリ零し･･･“とうに熟れごろだ“と知らせる陰茎を、まるで視線で犯しているかの如くじっと眺めて吟味しつつ。 　竿の動きに釣られ、恥骨のすぐ傍まできゅっと持ち上がった睾丸を･･･戸渡りのあたりから袋込め掬い上げながら撫でまわしたり、袋の合わせ目（陰嚢縫線のこと）を指先で撫で上げたついでに、わき腹や乳首までも刺激してみたりと･･･。 やっと灯った官能の火種を『もっともっと』と煽って大きくする一方で。 （なにせ“全身どこもかしこも性感帯“、かつ少々･･･セックスの時に限りであるがマゾっ気もある黒子は･･･睾丸への愛撫だって、竿へのそれとそん色ないくらい感じまくってくれるので） 　対岸からけしかけるだけでよかったはずの赤司までも、まんまとその痴態に。 ――いいところを刺激するたびいやらしく跳ねたりくねったりする、いつまでたっても少年っぽさの抜けない若枝みたいな肢体やら。 どうしても堪えきれず。思わず･･･といった感じに洩れ出る、無理やり噛み殺した喘ぎやらにまんまと中てられてしまい。 ･･･まだ指一本突っ込むのすら無理そうな固く閉じた蕾に今すぐ･･･痛いほどガチガチに張りつめた4.2×19.5cmの凶器をねじ込んで、奥をガンガン突いてやりたいとか。 　とりあえずその勢いのまま『一回中に出させてくれないか？！　テツヤ』なんていう、自分本位すぎる欲求と戦う――。 ･･･ミイラ取りのつもりが、うっかりミイラにされちゃったせいで･･･わかりやすくベタなことになっている、（オレの）テツヤ限定・どスケベ魔王様に負けず劣らず。