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17 東矢(・)

「うわっ!」 勢いよく扉を開き、ベッドへとドンッと押された。 ボスッと座り込めば硬いパイプベッドが大きく軋む。 急な佑の行動に戸惑うばかりで、無言のままここまて引っ張ってきた幼馴染みの顔を見上げた。 「…佑?」 「寝ろ」 「ふぇ?」 「『ふぇ』じゃねぇ、寝ろ」 ガタガタとパイプ椅子を動かしドカッとそこに座ると、佑は大きく息を吐いた。 言われるがままに横になれば、「寒ぃか?」とボソッと聞いてくる。 あ…そりゃ、心配するか。 『大丈夫』と手を上げようとして、自分の体が震えていることに気付いた。 「…………………」 「…………………」 互いに無言のまま、カチカチと響く時計の音を聞く。 やがて1限目のチャイムが鳴り響き、その音に佑を見上げた。 「授業始まったよ。」 「だな。」 「俺は大丈夫だから、佑戻らないと。」 「サボる」 「いや、普通にダメでしょ。」 「うっせぇ、タリィんだよ。」 椅子の背もたれに寄りかかり佑は目を瞑ってしまう。 どうやら本当にサボるつもりらしい。 「……保健の先生いないね。」 「ん。」 「休みかな?」 「サボってんじゃね?」 「何それ、佑じゃあるまいし。」 ケラケラと笑えば「うっせぇ」と佑も笑った。 穏やかな空気と佑の存在がジワリと心に染み込む。 「ッ、」 急に鼻がツンと痛み、目頭が熱くなった。 「ごめ、佑」 「見てねぇし、聞いてねぇ。」 「え?」 自分が情けなくて。 まさか友達の体温にまで、あの男の存在を思い出させられるとは思っていなかった。 身体が震えるほどの気持ち悪さだけが残されて、その事実に涙が出てくる。 「だから泣こうが喚こうが、俺は知らねぇ」 「……うん」 目を瞑ったまま紡がれる言葉に、また目頭が熱くなったー。

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