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19 【旅行】佑
ジリジリと殺しにかかって来ているとしか思えない陽射しと、何千匹いんだよと突っ込みたくなるような蝉の鳴き声。
前日の雨のお陰か山の緑は青々としていて、くっきりとした青空と緑のロケーションにため息が出た。
「雨止んで良かったねぇ。」
のんびりとそういう東矢の声に「何でそんなに元気なんだよ…」とぼやいた。
「佑が暑さに弱すぎなんだよ。アイス食べる?」
「マジでいらねぇ。んな甘いもん食ったら余計死ぬ。」
差し出されたソフトクリームを丁重に断り、持っていた炭酸水を一気に呷った。
ゴミ箱に空のペットボトルを突っ込み東矢を振り向けばソフトクリームの最後の一口を放り込むところで、その表情から甘さを連想してしまい眉が寄った。
「人が美味しく食ってるもん、気持ち悪そうにみないでくれる?」
「安心しろ、悪そうに見てるんじゃなくて、気持ちわりぃって見てるから。」
「ひっでぇ!」
笑いながらベンチに置いていた荷物を肩に下げ、腕時計を確認した。
4時15分…
「チェックインしてからまた出るか?」
「うん。ここからだと…ああ、徒歩5分ほどみたいだよ。」
スマホをチェックしながら楽しそうに答える東矢に「んじゃ、さっさと行こうぜ」と告げ、バスの待ち合い室を出た。
夏休みを利用しての旅行。
東矢の希望で予定を立てたが、昨日までのバイト三昧が祟ってすでに疲れきっている体。
温泉入って酒飲んで旨いもん食って、あとは涼しい部屋で寝る。
それを楽しみに溶けそうに暑い中を歩く。
「うわぁ、めっちゃ河も綺麗!」
俺とは正反対に、今にも飛び込むんじゃないかって勢いで橋の下を覗き込む東矢に呆れてしまう。
なんでコイツこんなに元気なんだ?
クソあっちぃ中、襟つきのポロシャツなんか着やがって。
やっぱりバカだと暑さも感じねぇのかな?
「…バカ見るみたいな目で見るの止めてくれる。」
「安心しろ、バカ見る目で見てるから。」
「ひっでぇ!!」
同じようなやり取りを繰り返しながら旅館までを歩く。
陽射しと戦いながらの5分は長いが、それでも何とかたどり着けば、涼しげな清流の音で出迎えられた。
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