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22 東矢

「お前、もう土産買ってんのかよ。」 「え、だってこれ美味いよ?」 「もしかして自分用か。」 「うん。」 地元の銘菓だという菓子を持ってレジに並べば呆れたような佑の声。 「どんだけ甘いもん好きなんだよ」とケラケラ笑う佑の片手には本人お目当ての地ビール。 さっき持っていたのとはラベルが違うってことは、あれ2本目だよね。 よく冷えたその瓶の結露を指で払い、クッと呷る様子を見つめた。 「夕食前にそんなに呑んで大丈夫なの?」 「あ?こんなん、炭酸水と変わらねぇだろ。」 「いやいや、二本も呑めば普通に酔うから。」 「そうか?まだいけっけどな。」 「まぁね、知ってるけども。」 残りのビールを一気に口に流し込む。 佑が酒に強いのは知っている。 こんな量じゃ顔色すら変えやしないだろう。 「……っ、」 ゴクッと喉が上下する様から、何見惚れているのかと慌てて視線を反らす。 「試食つまみあるよ、あそこ。漬け物だけど。」 誤魔化すように土産物店の一角を指差せば、手の甲で口元を拭いながら佑がチラッとそちらを見た。 「さっき食った。まぁまぁの味。」 「隣の饅頭は?」 「食ってねぇ。」 「美味かったよ、あれも。」 「いらね。」 「お土産に買って帰ろうかなぁ。佑の。」 「喧嘩ならいつでも買うが?」 「勝てない喧嘩は売りません。」 笑いながらいつもと変わりないやり取り。 どうってことない会話が楽しくて仕方ないのは旅先だからだろうか。 「お兄ちゃん達、次はどこに行くんだい?」 レジのおばちゃんが声をかけてくるのに「決めてねぇよ。」と隣の幼馴染みが答える。 それが少し意外に感じて佑を見た。 暑くて「喋るのがたりぃ」とか言ってたのに。 「どっかオススメの場所ってあるか?」と意気揚々と会話しているところを見ると、もしかしたら平気そうな顔して若干酔っているのかもしれない。 「それにしても、お兄ちゃん達仲良いねぇ。」 「まぁな、こいつ甘党のバカだけど。」 「辛党のアホに言われたくない。」 即座に返せばおばちゃんがケラケラと笑った。 「よし、じゃあ二人ともカッコいいからサービスしようかね。ほらこれ、すぐそこの酒蔵が作ってるやつ。他の客には内緒だよ。」 「うお、マジか。」 「え、ありがとう。おばちゃん」 そう言って渡されたのはワンカップの日本酒、ちゃんと2コ。 菓子とビールしか買ってない俺達には過ぎるほどのサービスにテンションが上がる。 それは佑も同じだったのか、受け取りながら「ありがとう、また明日もくるわ。」と笑っているのを見て、本当に機嫌良いなと可笑しくなった。

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