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24 佑

「やめてください…!」 不意に聞こえてくる小さな悲鳴。 足湯とは反対側、古い民家が並ぶ通りには昔ながらの店が並んでいる。 細い路地には朝顔や名前も知らない蔦の植物が咲いていて、それらが影を作るように道を覆っている為見えにくいが声はその一角から聞こえて来ていた。 「…何だろうね。」 暑さと足湯の相乗効果で流石に東矢も汗をかいていて、額を拭いながら目を細めている。 「さぁな」 濡れた足を雑にジーンズの端で拭きサンダルを引っかける。 東矢も同じように立ち上がるのを視界の端に捉え、路地へと足を向けた。 「そんなに嫌がらなくても、一緒に遊ぼうって言ってるだけでしょ。」 「や、離して!」 近づくにつれ大きくなる声。 女2人と男3人。 どう見ても嫌がっている女の手首を掴み、ニヤニヤと笑う野郎共のその様子に大きなタメ息が出た。 無理やりのナンパらしいが、男の方は酔ってるのかすでに顔が赤い。 人通りが少なく穴場だとおばちゃん教えてくれたけど、タチの悪い観光客はどこにでもいるんだな。 呆れ半分、暑さへの苛立ち半分。 せっかくゆっくり過ごしていた時間、なんでこんな酔っ払いどもに邪魔されなきゃならないのか。 「たりぃ…」とぼやきつつ、放っておくこともできず近づいていく。 「…なぁ、あんたら。邪魔。」 「あぁ?ってぇ!!」 振り向いた一人の男の腕を掴み、捩る。 痛みで荒げる声を無視して力を込めれば、それを見ていた男が女の手を離した。 「そこ。その道通りてぇから退けてくんない?」 「ってぇな!離せよ、おら!!」 「めんどくせぇな…」 「うわっ!!」 喚く男を連れの方に投げ込む。 その隙に女を後ろに庇うと、東矢が安心させるように声をかけた。 「大丈夫?ケガはない?」 顔を上げた女二人がどこかホッとした表情を見せる。 「だ、大丈夫です…」 「そ、良かった。ほら、早く行きなよ。」 「でも…」 「平気平気、俺らケンカ強いから。」 ニッコリと笑うと「ね?だからバイバイ」と手を振る東矢に、内心苦笑した。 何が『ケンカ強い』だ。 ケンカなんかしたことねぇくせに。 「…邪魔なんだけど」 さっさと行けば良いのにモダモダしてるのに若干苛つきタメ息混じりに告げれば、ビクッと体を震わせ弾かれたように頭を下げる。 「ありがとうございます…!」 そう言って走り去る女二人を確認して、目の前の野郎3人に向き直った。

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