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26 佑
「イッテェ…」
「相手の動き見てたら避けられんだろうが。」
「佑と一緒にしないで。こっちは普通のオトコノコなんだよ。」
「人をヤンキー上がりみてぇに言うなや。」
「似たようなもんでしょ。それにしても、ゴメン…」
店先の古びたベンチに座り、殴られた頬を擦りながら東矢がショボくれる。
渇いた喉を炭酸水で潤し項垂れる頭を見下ろした。
「別に仕方ねぇだろ。敵は討った。」
「敵って…」
「おら、いつまでも項垂れてねぇで。旅館帰っぞ、腹へった。」
困ったように笑う東矢の頭をワシャワシャと乱暴に撫でる。
「痛い痛い!もっとソフトに!」
「うるせぇ、行くぞ。」
ニッと笑えば、東矢が一瞬眩しそうに瞳を歪めたー。
「お、頑張ったな。」
蹲る男二人を尻目に振り向けば、ゼェゼェと息を切らす東矢が「ん、頑張った…褒めて…」と顔を上げた。
その側には腹を抱えて呻く男の姿。
「こっちも片付いた。帰ろうぜ。」
よろよろと立ちあがり、互いを支えるようにして逃げる男二人を顎で示せば「おつかれー…」と弱々しい声が返ってくる。
穏やかな性格の東矢の初ケンカ。
無傷とは言えないがそれでも見事勝利を納め、置いていた買い物袋を手に取ると東矢は俺の横に並んだ。
「クソッ、余計汗かいた…」
「だね、温泉入ってスッキリしたい…うわっ!」
シャツの腹で汗を拭っていれば、東矢が小さく叫んだ。
見れば、いつの間に立ち上がっていたのか残っていた男が背後から東矢を羽交い締めにしていて。
「…ガキが、ふざけんなよ…」
口の端から血を流し、アルコールに加え怒りで顔を赤く染めたまま俺を睨み付けてくる。
「諦め悪ぃな…あんた」
負けたくせにまだ吠えるその様子に呆れてしまう。
どうするかな…アホが捕まりやがって。
もっとキッチリ沈めとかねぇからこんな様になんだよ。
首筋を掻きながらそんなことを考えていれば、
ガチャン…!!
ガラスの割れる音が狭い路地に響いたー。
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