15 / 28

15.佑(・)

冷たい水がコップから溢れ手を濡らしていく。 魘され、叫んで起きた東矢の声。 汗をかき息を整える姿に、どれだけアイツが追い詰められているのかが分かる。 通学中、急に様子がおかしくなった東矢が小さく呟いた言葉。 『あの男だ...絶対』 その視線の先には数人の高校生、そのうちの一人を睨む東矢の表情は青ざめていた。 恐怖心 嫌悪感 そして怒り 『東矢!』 マイナスの感情に飲み込まれ小さく震える肩を掴み、意識をこっちに向けさせた。 何事もなかったように終わらせるつもりだったのに、まさか犯人に遭遇するなんて。 放っておけなくて泊まり込んだ俺に東矢は「ありがとう」と呟いた。 そのアイツらしくない弱々しい表情。 そして今 こうして悪夢に魘される東矢の姿を目の当たりにして、腹の中がグチャグチャとかき混ぜられるような怒りが沸き上がる。 「.............」 コップを片手に2階へと続く階段を静かに登る。 おじさんやおばさんを起こさないように。 東矢の部屋の扉を開けるころには、俺の心は決まっていたー。

ともだちにシェアしよう!