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第1話-3
「美味しいか?」
「うん、おいしいよ。せんせは?おいしい?」
「お前と一緒だと美味しいよ」
「えへへ、俺も!」
彼の笑顔を見ると心が満たされるのを感じた。
出来る限り、2人で食事をするようにした。
今までの食事はただ栄養を摂るためだけのものだったから。
日が経つにつれ彼の包帯やガーゼが取れていった。傷痕はたくさん残ったけど、痛みもなく血が出ない事を彼は喜んでいた。
「今日から外、出て良いって。出られそう?」
「ええと……ううん……」
「じゃあ、今日はやめておこう。廊下は?」
「だいじょうぶ……」
「うん、じゃあ行こうか。体、起こすよ」
彼はガラス細工のように繊細に思えた。あまりに小さく、細く、軽い。ベッドから車椅子へ移す時、壊してしまわないか不安だった。病院から外出許可(といっても行けるのは庭くらい)が出てからも、彼は外に出てお日様に当たるのを怖がった。しばらくは廊下を車椅子椅子で回ったり、玄関の手前くらいで止まって外を観察したりした。
「今日は外に行けそう?」
「ううん……」
「少しだけ、出てみないか?おれも一緒だ」
「センセがいっしょなら、ちょっとだけ……」
彼は怖がり車椅子のアームサポートを強く握りしめていたので、マシューは彼の頭を撫でて優しく抱きしめた。母から「たくさん抱きしめてあげなさい」と言われていたので、彼が怖がってていたり、不安がっていると気付いたらとりあえず抱きしめていた。彼は抱きしめられながらもごもご何かを言っていたが聞き取れなかった。
中庭へ繋がる通路で車椅子を止め、外に続くひなたを観察する。行けそう?と彼を伺うと「こわい」とはっきり口にした。
手を繋いでいたら?
ちょっとこわい。
きっと暖かいよ。
センセのほうがあたたかくていいもん。
そうかな。試してみない?
ううん……。
ちょっとだけ。
手を握ったまま車椅子は押せないため、マシューは車椅子を魔法で動かした。彼は両手がいい、と駄々を捏ねたのでマシューはそれに従い、細い両手をしっかり握った。彼を引っ張るようにして思い切って外に出た。
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