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第1話-4
眩しくて、彼は目を瞑ったようだった。あつい、と泣きそうになっていたのでマシューは持っていたキャップを彼に被せた。
「今日は暖かいね」
「………」
「平気そう?」
「うん……」
「そうだ、原っぱでお昼寝でもしようか。ちょうど日陰もある……」
マシューは車椅子を原っぱ近くの通路まで押し、ブレーキをかけると彼の腰と膝裏に腕を入れて抱え上げた。こわい、と彼はマシューのシャツを掴んだが、大丈夫だよと宥め日陰のあるところまで歩いた。
彼の体は骨の感覚くらいしかなく軽かった。本当に生きているのか不安になるくらい。
影の上に座らせる。彼は居心地悪そうに足を動かした。
「原っぱに座るのは初めて?」
「たぶん……」
「どう?感覚は」
「ちくちくする……」
彼は歩けない。だが感覚はあるようだ。
マシューも彼の隣に腰を下ろす。今日は彼が元気そうなので、色々聞いてみることにした。
「音はどうだ?おれ以外の声も聞こえるようになって来たか?」
「ううん……。センセの声しかはっきりきこえない……」
「そうか……。目は見えているか?」
「うん。ちょっとだけみえるようになってきたよ。まだぼんやりしてるけど……」
緑のくりくりとした目をマシューに向けて、ニコッと微笑んだ。センセ、今日は顔が赤いね。マシューも思わず口元が緩んだ。今日は暑いんだ。
「外、出られたな」
「うん、へいきだったみたい」
「ふふ、そうだな。……眠いなら眠って良いぞ」
「うーーん……ねる……おこしてね……」
彼は原っぱに寝っ転がり、膝から下を日向に放り出して目を瞑った。しばらくするとすやすや寝息が聞こえてきた。木漏れ日が彼の明るい赤毛や、そばかすや、青白い肌を照らす。キャップはいつの間にか頭から取って、お腹の上でぎゅっと握りしめている。
彼とずっと一緒にいたい。
マシューは何とかして彼を家に取り込めないか画策していた。母さえ納得できれば、兄弟の意見なんてどうということはない。このままだと、どこの馬の骨とも分からない家に引き取られてしまう。非魔法使いの家ならともかく、魔法使いの家に引き取られるなんてとんでもない。四肢や感覚が不自由で精神が参っている子供なんて、いっときの玩具にされてお終いだ。
この魔法界では、魔法をまともに使えない者など人権が無いに等しいから。
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