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第2話-1

「ねぇ、おれと家族になりたい?」 膝の上に彼を座らせて、頭を撫でながら尋ねる。うん?と膝の上で首を傾げて、そうだね?と答えた。いまいち意味を理解してないようだった。 「家族になったらね、毎日一緒にいられるんだよ」 「ほんと?センセとずっといっしょ?おべんきょおしえてくれるの?」 「もちろん。おれに出来ることなら何だって」 彼は頬を赤らめ満面の笑みになり、じゃあなる!と足をジタバタさせた。だけどね、とマシューは神妙な面持ちになり付け加えた。 「家族になるには、少し辛い思いをするかもしれない」 「つらい……?たたかれるの……?」 「いや、1週間ほど熱が出て、吐いたり、うんちがたくさん出たりするんだ……」 それも、うまく行ったらの話だが。上手くいかなかったら……マシューは慌ててその考えを頭から振り払った。 「いいよ!へいき!」 マシューの予想に反して彼は二つ返事で了承した。説得する台詞は何個も考えてきたが、幸い使う必要はなさそうだった。 「ほ、本当か?とても辛いかもしれないんだぞ?」 「それくらいへいきだよ。だけど……」 両手の指を絡ませて、何かを言いづらそうにもじもじとした。マシューは彼を抱きしめて「怒らないから言ってみて」と耳元で囁いた。 「あのね……その時、センセはそばにいてくれるの?」 なんだそんなこと、とマシューは笑った。彼はわらわないでよ!と眉を八の字にさせて怒った。 「おれはずっとそばに居るつもりだよ」 「ほんと?ほんとに?うそつかない?」 「うん。だけどトイレには行かせてね」 「うん!」 元気に返事をすると、体重を遠慮なくマシューに預けてきた。これで良かったのだろうか。……いいや、これで良かったのだ。彼が生き残れる確率は、これが一番高いのだから。それに、うまくいけば晴れて魔法界に迎え入れられる。彼を、繋ぎ止めておける。彼の意思でどこかに行けることは無くなるが、それはおれがどうにかしてやれる。マシューは無理矢理自分を納得させ、また彼を抱きしめた。

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