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「そんな驚いた顔しないでよ。俺、普段は無口だと思われているみたいだけど、普通に喋るし。あんた同じクラスの吉岡千晃でしょ?」
普段は他人など興味なさそうにしている桜田が千晃のことを知っている……。
「君は、桜田優作くんだよね?」
目の前の男はこくりと頷くと、満面の笑みを浮かべてきた。桜田が千晃に笑いかけている、
言葉を交わしている。
この謎の多い男の情報がひとつひとつ暴かれていくのが面白くて、自然と興味をそそられた。
男は笑みを止めると、ゆっくり千晃に歩み寄ってきては、耳元まで顔を近づけてきた。離れていて気が付かなかったが、男からの仄かな甘い香りが鼻腔をくすぐる。同性なのに、やけに色気があって千晃をドキドキさせる。
「いいこと教えてあげるから俺といてよ。椿の話し相手になれる特典付きで」
艶めきのある吐息と共に背中から頭の先に筋でも通ったかのようなゾクゾク感を覚えた。
「いいよ、俺も桜田君に興味あるから」
同年代なのに、こうも見せつけられる色気のある雰囲気に、呑まれそうになりながらも、千晃は桜田の提案に乗っかった。
椿の話し相手の特典なんて端から期待はしていない。
そもそも一度ならまだしも、二度まで振られている千晃が椿に近づける訳などない。だけど、それをも凌駕するくらいにこの男への興味は膨れていた。
誰にも群れない一匹狼の美男である桜田優作のことがもっと知りたくなった。
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