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並んで帰るバス停までの道のり。心なしかいつもより足取りが軽そうな優作に対して千晃の気持ちは晴れないままだった。 「優、良かったじゃん」  だからと言って、日頃千晃が一方的に話かけている帰り道で、何も喋らない訳にもいかずに、優作にかける事のできた言葉がこれだった。言葉と裏腹に盛大に祝う気持ちになれないのはどうしてだろうか……。 「ああ……」  照れと嬉しさを滲ませる優作の反応に胸の内がチリチリと痛む。先程、教室の前で話し掛けてきた青年の名前は|篠塚兼《しのづかけん》と言って二つ下の下級生だった。 無情にも篠塚は友人関係になることだけではなく、椿のことが好きだからと優作に協力関係でいることも申し込んできた。当然優作は『俺ができることなら力になるよ』と篠塚のお願いを快く受け入れては、早々に連絡先を交換していた。一番傍に居る筈の千晃ですら聞くことのできなかった連絡先を、彼が好意を寄せているということだけで簡単に教えてもらえる。 これが、優作の興味の対象であるか、そうでないかの線引きをされたみたいで見ていて心苦しくなった。 相手が椿を好きではない、他の誰かであったらこんな気持ちにならなかっただろうか。篠塚が優作を利用しようとしているのが、あからさますぎて正義感から友達として優作を守ろうとしているのだろうか……。 普段と変わらない道の筈なのに、上手く会話も広げられず、やけに千晃だけが重たい気持ちを引きずっている。優作は幸せいっぱいの浮かれた表情で歩いているというのに……。 「優、こんなこと言うことじゃないけどさ。篠塚って子だけど、優と友達になることが目的じゃなくて、椿さんに近づく為の方が一番の目的なんじゃないのかな?」  憎らしいほど浮かれた優作の横顔を眺めながら、腹の底から沸き立つ黒い感情を自分の中に留めておく事が出来ずに、少しの意地悪心から問いかけてみた。 この問いに優作は何と答えるだろうか。既に分かっていることを小突かれて怒ってしまうだろうか。全部の意識を彼の口元に集中させて、反応を待つ。 「分かってる。俺もそんな馬鹿じゃない」  やはり優作は全て理解していた。篠塚の思考を理解した上で受け入れていた。 「それに、可能性はなくても、兼に近づけるきっかけが出来たことは嬉しい……」 「そっか……」  優作には似合わない控え目な返答が返ってきて驚いたと同時に虚しくなった。 それは優作は本気で篠塚に恋心を抱いているのだと見せつけられたようなもので、少しだけ寂しそうに遠くを見つめる優作に、底意地の悪い質問をしたと後悔した。

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