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そんな彼らといて優作は楽しいのだろうか。それよりも自分といて何時もみたいに冗談言い合って笑っていた方が……なんて考えては、千晃は座席から静かに立ち上がると飯田に「ちょっと行ってくる」と一声かけて優作の姿を追いかけていた。 「待って。優」  上層階へと繋がる階段の中間を上っている優作を呼び止める。優作は千晃の声に気が付くと、険しい表情をさせながら振り返ってきた。右足は既に一段上へと上げられていることから、優作が先を急いでいる事がわかる。 「おはよ。今から上行くの?」  ただ睨んでくるだけの優作との沈黙が堪えられずに、透かさず問う。 「うん、吉岡。何?」 「いや…特に用はないんだけど。篠塚くんとのこと頑張って、応援してるから……」 「ああ……」  一刻も早く先へと行きたがっている優作を遮ってまで足止めをする勇気はなかった。 その名残惜しさから、優作が階段を上っていく姿を見送っては、暫くしてから千晃も後をつける。屋上へと繋がる扉が閉まる音がしたのを確認して階段を上り、鉄扉の前で立ち止まった。 今の千晃にとって見てはならないものだと分かっていても、怖いもの見たさで小窓から屋上内の様子を覗く。 そこには、椿と篠塚がフェンス沿いのベンチに腰を掛けて、膝にお弁当を広げている姿があった。優作はというと、地べたのコンクリートに座り、パンを齧りながら篠塚のことをじっと見つめている。 椿なんていないも同然かのように、篠塚から離れることがない目線。椿と話している篠塚が笑えば、優作の口元も綻ぶ。今まで自分に向けてきたいい加減な態度の彼とは違うことに胸が苦しくなった。 こんな優作を見せられたんじゃ、望みはないのだから諦めろとは言えない。一緒に居られるだけで充分だと言っている彼の邪魔をする権利は千晃にはなかった。 できることならこの気持ちから直ぐに解放されたい……。 嫉妬で気が狂いそうになるこの感情から……。 千晃が落ち込んだように深く息を吐いていると、座っていた優作と視線がかち合ったような気がして、慌てて目線を逸らしては、階段を駆け下りた。

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