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けれど、彼が人気者だったらきっと仲良くはなっていないだろうし、こうやって友達として彼を独り占めすることもなかっただろう。もっとこの何気ない時間が続けばいいのに。篠塚の所なんか行かずにずっと傍で……。 やはり、優作の傍にいるとそんなことばかり考えてしまう。千晃はやり場のないこの感情を、自らの頭を掻きむしることでやり過ごしていた。 「なあ、吉岡」  優作に呼ばれて振り返った途端に、彼の手が伸びてくると、冷たい指先に頬を摘ままれた。千晃はそれを認識するなり、ガタっと椅子を引いて彼から距離をとると、摘ままれた頬を両手で触る。 「な、なにっ⁉ 」 「お前さ……俺のこと……。いや、吉岡のほっぺって柔らかそうだなーって思っただけ」  動揺しているのは千晃だけなのか、優作は平然としたまま独り言ちる。 「柔らかそうって……」  優作のお得意の気まぐれで、揶揄って遊んでいるだけ。  飯田たち同様の茶番の一種だと分かっていても、顔が徐々に熱くなってくる。こんなところを見られたら、優作に気持ちを悟られてしまう。なのに、久しぶりに彼に触れてもらえたことが、やけに嬉しくて心が浮つく。 「からかうのもほどほどにしてよ……。優がやると洒落になんないから」  そうだよな、と涼やかな表情で呟くと優作は座席から立ち上がった。 「優、どこいくの」  教室から出て行こうとする背中に問うと背を向けたまま、深く息を吐いていた。 「トイレ。ホームルームまでには帰ってくる。吉岡……。そのままでいろよ」  優作が出て行くと同時に、廊下が騒がしくなり、続々と教室にクラスメイが入ってくる。最後の優作の言葉が胸に突っかかったが、考えているうちに飯田と辻本が登校してきて、千晃の思考は強制終了された。 ――そのままでいろよって、どういう意味だよ……。

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