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6-3
放課後の駅前のファーストフード店。四人掛けの座席で左手に頭を預けながら、ストローを咥えて窓の外を眺める。
「千晃、さっきからブクブク、はしたないぞ」
「よっしーがぼーっとしてるなんて珍しい」
飲み物に息を吹いて遊ぶ小学生のように、無意識に紙カップに入ったオレンジジュースを吹いていたのを向かいに座る飯田と辻本に指摘されて我に返った。
「ああ、ごめん。別になんでもないよ」
今日一日、優作のことが気がかりで上の空だった。
あの後、席を外した優作は、始業開始ギリギリに帰ってくると授業に出席していたものの、宣言通りに前席のラグビー部のがたいのいい男を盾に居眠りこけていた。本人に早朝の言葉の真意を聞くこともできずに、午前の終業のチャイムが鳴り、即座に起き上がった優作は教室を出て行く。
飯田と辻本といつものように昼休みを過ごしていると、暫くして戻ってきた優作は鞄を取りにくるなり、再び教室を出て行き、それ以降帰ってくることはなかった。
今朝の少し浮ついたような雰囲気とは違う、覇気のない様子だった。気怠いから早退したのと違う気がする。
優作に何かあったのだろうかと思わせるほどだった。
「あのさ、そのままで居てってどういう意味だと思う?」
「さぁ?そのまんまなんじゃねぇの?」
自分でもアホな問いかけだと分かっていたものの、割と真剣に問い掛けただけに、飯田から答えになっていない答えが返ってきて、ガクリと肩を落とす。
「なんか、|ORIONGIRL《オリオンガール》の曲にもあったよね。そのままの君で~って」
辻本に至っては、推しアイドルの曲を一節歌い始める始末。確かにORIONGIRLの『そのままの君で』って曲は千晃の片手に入る程の神曲ではあるけども、そうじゃない……。
やはりこの二人と一緒に居る時に自分だけ真剣に考え事するなんて馬鹿らしく思えてきた。
「そういえば、千晃。桜田とどうなった?」
肩を落とし、頭を抱えて溜息を吐いたところで、飯田に問われて顔を上げる。
「どうなったって……。別に何も……」
「ほら、千晃。何日か前に桜田追いかけた後、落ち込んで帰ってきたから。てっきり砕け散ったのかと思ってさ……。それでブクブク落ち込んでんだろ?」
飯田に背中を押されるように優作の後を追って呼び止めたものの、何もできずに教室に戻ってきた数日前。
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