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――あの格好いい桜田先輩、男とキスしてんのみたぞ。
――俺は手繋ぎながらホテルに入っていくのみた。
――この間、校門前で高級車のおっさんに送り迎えしてもらってるとこ見たけど。
――流石魔性のゲイ、欲求不満でパパ活でもしてんのかw
――つか、食堂でいつも一緒にいるのって彼氏?
――そういうのは彼氏に満たしてもらえよwww
どこまでが本当なのかは分からない。だからと言って、人のことを面白可笑しく書いていい理由にはならないし、それに便乗してゴシップに群がるハエ共が心底気持ち悪い。
たかだかネット上の書き込みを真に受ける事なんてないが、自分は優作のことを何も知らないのだと思い知らされた。
「千晃、これ見たからって全部が本当な訳じゃないし、気にする必要ないぞ」
「そうそう、こんなの只の暇人か、桜田くんのことを妬んでいる奴が適当に書いただけだから、気にしない、気にしない」
千晃は俯きながらテーブルの上で強く拳を握り、感情のままに湧き上がる、やり場のない怒りを堪えていると、飯田と辻本に宥められる。
そうだ、わざわざこんなネット上の書き込みに心を乱されるなんて馬鹿馬鹿しい。
「おい、辻本。ならわざわざ、知らない千晃に見せなくても良かっただろ」
飯田も彼なりに心配してくれているのか、何も考えずに話す辻本を咎めていたが、辻本はちっちっち、と人差し指を顔の前で振り子のように左右に揺らした。
「飯田っち、それは聞き捨てならんよ。俺なりに心配してんの。俺の推しが散々ネットで叩かれていたらさ、全力で守りたいって思うじゃん?よっしーが桜田くんのことそう思ってるなら、知らない方がショックじゃない?」
確かに辻本の言うことも一理ある。
ネット上の件に関しては嘘とも断定できないのは自分が優作のことを良く知らないからだ。
いつも一緒に居るのにもかかわらず、彼のプライベートは何一つ知らなかったのを思い知らされた。どんな家に住んでいるのか、家族はいるのか、普段の休みは何をしているのか。何が好物なのか。それでいてよくもまあ、一丁前に優作のことを好きになって嫉妬できたものだと呆れを通り越して笑いたくなる。
千晃は両手で顔を覆うと、嘆き声と共に深い溜息を吐いた。
「ショックだよ。なんなら今すげぇショック受けてる。優のことが好きなのに、何も知らなかったのが情けない」
「千晃、詳しいことは分からないけど、俺らはお前のことを応援するよ」
飯田の言葉が胸にじーんと響き、目頭が熱くなる。今
日の優作は確実に何かあったに違いない。
だとしたら本当のことを知りたい……。
友達としてでもいいから、俺に何かできることがあるのであれば……。
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