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それに、さっきから優作のことを色眼鏡で見ているのが、千晃の癪に障る。高い車も、男が身に付けているゴールドの時計も、やはりあの噂は事実なのではないかと信憑性が増してくる。
「お前には関係ない」
「関係ないって、昼間は急に学校いなくなったじゃん。優、なんかあったんじゃないの?」
もし本当なら黙って見過ごせるわけがない。彼自身に何か訳があるのかもしれないが、優作が好きなのは篠塚だ。今一緒にいる男じゃない。
「あーうざっ。いなくなって悪い?お前に迷惑かけてねえし」
「そういうことじゃない。今朝は楽しそうだった優が急に顔色変えて帰っていくとこみたら、心配するのは当たり前だろ」
「大きなお世話だ」
「いいから言えよ。誰なんだよ」
店から出てくる人たちの集まってくる視線を横目にしながらも優作との口論は止まらない。なかなか口を割らない優作を腹立たしく思いながらも、運転席を指して問い詰める。
「利害関係のある友達。以上、これで安心したかよ」
「はぁ?それ、どういうことだよ」
「はぁ……金貰ってセックスしてる友達って言えば伝わる?」
「せっ……」
溜息の後に淡々と吐かれた言葉に動揺する。千晃にとって聞き慣れなくて羞恥を覚えるその単語に顔が熱くなる。それと同時に、ほんの少しでも優作が身売りするような真似なんかしないと信じていただけにショックだった。だからと言って軽蔑してる訳じゃなくて、尚更この手は離せない。
普段なら優作の事情に触れすぎぬように身を引いていたが、一歩も食い下がる気はなかった。優作がどんな行いをしてようとも、道を外そうとも、自分の気持ちが届かないのならせめて、優作には好きな人と幸せになってほしい。
こんな適当な男とじゃなくてちゃんと……。
「ねえ、優作くん。まだかな?僕も時間がないんだ。あまり遅くなると妻がうるさくてね。早くしてほしいんだけど」
今まで黙ってやりとりを傍観していた運転席の男が声を掛けてきた。妻がうるさくて……ってこの人は既婚者なのだろうか……。
そう疑問に思った矢先に、ハンドルを握る左手薬指に銀色に光る指輪が目に入り、確信する。
いい年をした既婚者が、男子高校生に鼻の下を伸ばして、お金払ってまで体の関係を迫っているなんて気味が悪い。こんな男に優作を渡すわけにいかない。
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