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「いや、話を終わったんで、もうだいじょうぶ……」 「すみません。優はこれから用事があるんで帰ります。それに優、好きな子いるんで関係はこれっきりでお願いします。失礼しました」  男に返事をする優作に割って入るように千晃が、頭を下げて丁重にお断りをすると、彼の手首を力ずくで掴んでは、その場から逃げ出した。 「おい、吉岡」 優作が何度も名前を呼ぶのを無視して、ただひたすらに走る。少しでも男が追ってこないようにと夢中で走ったせいか、気づいたらいつものバス停を通り過ぎた先にある公園に辿り着いていた。 誰もいない夜の公園は、電灯の明かりだけが照らされていて、少し寂しい。全力で走ったせいか、息が上がり、千晃は両手を膝につかせて屈むと、何度も浅く息を吐いては呼吸を整えた。 隣の優作も呼吸を荒らげていたが、余程一連の出来事が不服であったのか、眉間に皺を寄せて此方を睨んできている。 「おい、吉岡。何してくれてんの」 「何してって、優こそ何、考えてんだよ」 優作のことを見ながらも、屈んだ体勢から立ち直る。 「別に何も考えてない。ヤって金貰えんなら万々歳だろ」 「万々歳って……。あんなおっさんと……。篠塚のことはどうしたんだよ?」 「振られた」 千晃にそう吐き捨てると、優作は背を向けて近くにあったボルダリング風の遊具に寄りかかって俯いた。 「振られたって……」  優作を追いかけては彼の目の前に向かい合わせに立つ。最初から分かっていた。 優作が椿のことが好きな篠塚との関係が結ばれることはないこと。けれど、可能性がなかったわけじゃない。振られたってことは、優作は篠塚に告白したんだろうか。  不謹慎にも、今まで抱えていたモヤモヤが安心感に変わった。 「吉岡、俺の掲示板の話知ってる?」 「あ、うん……」 「兼がそれ見たみたいでさ、気持ち悪いんだってホモとか。吉岡も見ただろ。あれ、本当だよ。そりゃあ引くよな。同性相手に腰振って女みたいに喘いでいるやつなんて……」   涙を堪えるように口元を歪める優作を見ていて胸が痛む。 「だけどさ、兼といたら楽しいし嬉しいけど、苦しいんだよ。椿の事しか考えてない兼のことをずっと傍で見ているだけしかできない辛さ、吉岡には分からないだろ?」  涙目で訴えてくる優作。自暴自棄になるのは理解できないが、声音から彼の嘆き悲しんでいる様が伝わってきて、放っておけない。千晃だって彼と置かれている状況は似たようなものだから……。 優作を好きだと自覚したけど、優作は篠塚のことが好きだからこの恋に望みはない。 だからと言って、誰かで埋め合わせしようなんて思わないけど、好きな人が苦しんでいる姿を見る方がもっと辛かった。 どうにかしてやりたくて、だけど下手に言葉を掛けてやれない。千晃は、ゆっくりと優作に近づいては、頭に右手を置いて慰めようとした時、彼に手を掴まれてしまった。

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