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六月の下旬。気温が高くなり始め、「マジで暑いんだけどー…」と体育館の窓辺に座って団扇を仰ぐ生徒たち。
気持ち程度に体育館の上部の窓を開けているにしても、風など一切入ってこず、熱中症対策で隅に扇風機が置かれているだけ。
インドア派の千晃からしても、毎年夏場が近づくと、体育だけは地獄のように思える。
そんな授業の一環として汗だくになりながら、バスケットボールの試合をする男たちを飯田と共にステージ上に腰を掛けて観戦していた。
コート内には、辻本が活発的に動いては、大活躍をしているのが地味に面白い。
それとは対称的に、自らボールを取りに行こうとも守備に徹するわけでもなく、群れから外れて棒立ちしている優作が悪目立ちしている。
「お宅の桜田、全くやる気なさげなんだけど」
辻本と優作を交互に目で追いかけていると、隣に座る飯田がそう呟いてきた。
誰から見ても孤島にいるかのように一人離れた場所にいることから、本当に体育が嫌いなのだと雰囲気から伝わってくる。休んでばかりの優作だから、単位の為に仕方なく出ているんだろう。
「おたくって……。俺のじゃないし」
「俺のじゃなくても、千晃は桜田の保護者じゃん?」
「ちょっと、飯田。怒るよ」
相変わらず、千晃と優作のこととなると飯田の興味を引くのか、揶揄ってくる彼に不貞腐れたように怒ると深く溜息を吐いた。
「どうしたんだ」
飯田に問われてここ一週間ほどの感情を思い返す。あの一件があってから、優作とは口を訊いていなかった。
ごめん、冗談だった。
などといつもの単なる喧嘩とはわけが違う。あそこまで言う必要はなかったとしても、吹っ掛けてきたのは優作からで、人の気持ちを軽くみてほしくはなかったのもあった。だけど、絶交状態のままでいるのも嫌な矛盾で心も脳内も爆発寸前だった。
「飯田。俺さぁー、優に絶交言い渡しちゃったんだよね」
千晃はステージ沿いに下げていた両足を上げて体育座りをすると、飯田の方を向いて、膝に顔を埋める。ひとりで考えていても堂々巡りで、心が晴れずに、誰かに話したかった。
飯田ならこの気持ちを少しでも軽くしてくれるような気がして……。
「なんで、そういうことになったの」
「俺の事好きじゃないのに、付き合ってもいいよとか言い出すから」
本当は彼が振られた腹いせにキスもされたが、腐れ縁の仲だとしても、そこまで赤裸々に話す勇気はなかった。
それに、優作自身のことも絡んでくるだけに下手に話すわけにもいかない。
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