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「何、千晃から告白したのか?それとも桜田にバレた?」
「してない。するつもりなんてなかった。でも優にはバレバレだった」
「だよな、千晃ってわかり易いもんな」
図星であることをサラッと言われて、千晃はガクリと頭を落とした。
「だよなって……。サラッと認めないでくれる?まぁ、そうなんだけどさ……」
どんなに隠そうとしても、すぐに粗が出てしまうのだろう。勘付いていた優作も、さぞ複雑な心境だったのではないかと思うと、第三者から見てもわかり易い自分の素直さに羞恥心を覚える。
「それって千晃の本心?」
「本心じゃないよ。いい加減なことを言う優にちょっと頭きちゃって勢いで言っちゃっただけというか……。優のことは恋愛感情で好きだけど友達関係を壊してまで付き合いたい訳じゃない」
ふと、コート内に目線を移すと、優作と目が合った気がした。ボールを追わずに腕を組んで此方を見てきたかと思えば、すぐに逸らされ、それと同時に試合終了の笛が鳴る。
優作はコートの中央に集まり、対戦相手に挨拶をすることもなく、そそくさとコートから捌けていってしまった。
「じゃあ、そのまま桜田に言えば仲直りなんじゃねーの?」
「言えたらこんなに気まずくなってないよ。ただ……」
「ただ……?」
「ただ……。優が俺を友達として受け入れてくれるかな?」
優作はどう思っているのだろうか。好意を寄せていると分かった上で友達付き合いを続けくれるのだろうか。
千晃の本心は、以前のように優作の冗談に振り回されながらも、笑い合って過ごせるならそれでよかった。
しかし、優作の気持ちは優作にしか分からない。
彼自身千晃のことなど、いつもついてきているだけの金魚の糞のような存在でしか思っていないかもしれない。
だとしたら、自分が恋愛感情を抱いているのは彼にとって鬱陶しいのではないだろうか……。
「くれんじゃねーの?少なくとも、お前と仲良くなってから桜田は学校に来るようになったじゃん?それは千晃といて楽しいからなんじゃないのか?」
飯田の一言で今まで過ごしてきた中で見た、優作の表情を思
い出す。お昼を誘ってくる彼も、アイドルの話をつまらなそう
に聞いては、時折揶揄ってくる彼も……。
自分と同じく、楽しいから一緒に居るのだと思いたい。じゃなかったとしても、千晃から行動しなければ、一度入ってしまった亀裂は時間が経つほどに、深まるばかりな気がした。
辺りを見渡し、優作の姿を探すと、いつの間にか彼は体育館の上手側のステージ階段に背を向けて座っていた。
左腕で頭を抱えながらスマホを弄っている。
千晃は意を決して、ステージから飛び降りると、回り込んで優作のいる階段の元へと向かう。
そして、階段の二段目の踏板に腰を下ろして俯いている彼の前に立つと、千晃の気配に気づいた彼の顔が上げられた。
「ねえ、優。放課後、空いている?話あるんだけど」
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