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好きな人を失望させてしまったショックと打ち砕かれてしまった期待。 傷つかないように、いわゆるそっち側の人間とはあまり関わらないように予防線を張っていた。関わることもなかったから忘れてしまっていたけど、多くの人の反応が兼みたいな偏見を持っている人がいることは分かっていた筈なのに……。 「ごめん、迷惑かけて……」  深く頭を下げて謝ることしかできない。自分が粗相さえしていなかったら兼に迷惑をかけることも、兼に軽蔑されることもなかった。 兼の願いを叶えてあげたかったのに、傍で見守ってやれるだけでよかったのに……。 「もう、いいです。先輩とはこれっきりにしますので。では」 「待って……」  優作を侮蔑の眼差しで睨んだ後、足早に屋上を出て行こうとする兼の腕を掴んで引き止める。  これ以上深追いをしてはいけないと頭の中で警鐘を鳴らしていても、本能が兼と終わりにしたくないと必死だった。 「こんなことしてるけどさ。俺、兼のことが好きなんだ。本当にどうしようもなく好きで……。もし兼が俺に希望を持ってくれるなら、俺なんだってするし。遊びだってしないし……。だから椿なんて諦めて、俺と……」  分かってほしい。椿なんかよりも何倍も兼のことを想っているのは自分だと。大切にしてやれるのは自分しかいないと。  そんな優作の願いも虚しく、掴んだ腕を振り落とされると左頬に衝撃を食らった。反動で右下へと俯き、次第に頬がジンジンと痛んでくるのを自分の左手で抑えた。 驚きのあまり言葉がでない。だけど、兼に頬を叩かれた事実は変わらない。 「よくそんなこと言えますね。気持ち悪い。僕に近づかないでください」  遠くなる背中を眺めては、優作はその場に立っていることもままなくなり、膝を抱えて蹲る。  初めて兼に触れることが出来たのが、ビンタなんて笑えない。笑えないのに痛みを辿って兼の温もりを探している自分が虚しい。悲しくて、辛くて、直ぐにでも消えてなくなりたい。  一層の事、泣いてしまえたら楽なのに涙すら出なかった。

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