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すぐ行けば、ホテル街があるにも関わらず、通常のホテルを使うところは、それなりに地位のある人間なのだろうか。優作にとっては、相手が社長だろうが、教員であろうが関係のない話。 部屋に入るなり、貪るようなキスをされては、衣類を脱がされながらベッドへと押し倒される。何の躊躇いなしに下肢を広げて、男を迎え入れると、半分意識が薄い中で、うっとりした表情で見下ろす男の姿があった。 首筋を男の唇で吸い付かれて、甘い息が漏れる。 「優作は首筋が弱いんだね。君みたいな綺麗な子は初めてだよ」 お酒の酔いと官能的な気持ちに酔いしれ、過敏に体が反応する度に、言葉で、体で責め立ててくる。断面的な意識の中で自分の開かれている下肢の間にある裸の男の体。 体の中心が熱く、気持ちよさに喘ぐ自分の声が頭に響いて気持ち悪いのに身体の快楽には抗えない。 何度も自分の名前を呼ばれた気がした。 これが好きな奴だったらどんなに良かっただろう。 毎回そう思うのに一時的でしかない人の温もりでも安心して、求めてしまう自分は、愚かな人間だ。  翌朝、腰の気だるさが昨夜の見知らぬ男と交わったことを思い起こさせる。ゆっくりと上体を起こし、布団に包まりながらベッドサイドの時計を見ると午前九時ちょっと前だった。ふと、サイドランプの真下にメモ書きが添えられているのが目につく。 昨夜の相手からなのは間違いなく、室内に気配がないことから、男は既にチェックアウトをしているようだった。 『良かったらまた会いたいな。連絡待ってるよ』  ご丁寧に番号まで書いて、セフレの誘いという所だろうか。昨夜は酒の酔いもあってか断片的しか思い出せないが、あまり相性が良かった記憶がない。それに、あの男は見た目からして自分の好みじゃなかった。 ありか、なしかで言えばなしだ。  優作はメモを手に取り、布団から抜け出すとゴミ箱へとクシャクシャに丸めて捨てる。  とりあえずシャワーを浴びてからホテルを出よう……。 何も身に付けていない体でシャワー室まで向かう。何気なく洗面台の鏡に映る自分の身体を眺めていると、右の首筋に赤い鬱血痕を見つけてギョッとした。 「やっぱり、ねえーな……」  初対面の相手に痕をつける男のことでもあるが、こうやって一時の感情に流されてしまう自分自身に向けてでもあった。  吉岡が知ったら呆れた顔しながらも優しく怒ってくるんだろうなー……。なんて思ったら自然と笑みがこぼれる。何だかんだで、吉岡といる時の自分が一番好きだ。 好きだとか嫌いだとか考える暇がないほど、あいつの話はくだらなくて楽しい。そんなことを考えていると久しぶりに会いたい衝動に駆られた。

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