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思わぬ再会
誰かに肩を叩かれた。多分隣の席の吉岡だろう。
まだ眠りから覚めたくなかった優作は、その肩を追い払う。
先程まで騒いでいたはずの生徒が静まり返り、一人の男が話をしている声。
多分担任教師の声だ。
別に担任の話を聞いたところで自分には関係のない話。顔を伏せたまま、再び意識を手放しかけた時、首筋を何かになぞられて、甘い息を吐いたと共に思わず頭を起こした。
首筋は自分の一番感じやすい場所。周りに聴こえるか聴こえないかの声量だったとはいえ、小さく声を上げてしまったことには違いない。
慌てて口を両手で塞ぐと、吉岡と反対側の隣の座席に気配を感じて視線を向ける。
滅多に学校へ来ていないとはいえ、記憶が確かであれば、隣は女子だったはず。
なのに、紺色のスーツを着た男が頬杖をついて此方をじっと眺めてきていた。
「優作。ちゃんと担任の先生の話は聞かないと、また僕がそこに痕つけるよ?」
狐のような細い目の男に見覚えがある。夏休み中に、楓の店で出会い、好みでもないのに勢いに流されて抱かれた男だ。
その男が何でここにいる……?
状況を呑みこむことができずに、呆然としている優作を見て、不敵な笑みを浮かべる男。気味が悪い。
「なんで、お前がここに……」
「水澤先生、なにかあったか?」
こいつが此処にいる訳を問おうとしたとこで、教壇に立っていた担任に遮られてしまう。
「いいえ、特には」
男は担任に呼ばれると、自分の問いかけには一切応答せずに、正面に向き直ってしまった。
続行されるホームルーム。先程担任が此奴のことを先生と呼んでいた。
じゃあ、この男は教師だったのだろうか……。
優作は平常心を保とうと、担任の話に集中してみるが、隣の存在が気になって内容など頭に入ってこなかった。
心拍数が早くなる。学校と自分の日常的な性に関わることに関しては住み分けをしている優作にとっては、この男が此処にいることは不都合極まりない。
向こうから仕掛けてこない限り無視をして他人のフリでもしていればいい。あまり意識しないように顔を反対側へと向けると、吉岡と目が合ってしまった。
眉を寄せては「優、どうした?」と声に出さずに口を動かして問いかけてくる吉岡に戸惑う。今いちばん、気づかれたくない人物なだけに余計にきまりが悪い。優作は首を左右に振り、俯くことしかできなかった。
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