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「吉岡はただの友達だ。俺とあんたのことには関係ないだろ」 「本当かな?」と顔を覗き込まれ、視線が泳ぐ。 自信をもって答えていいはずなのに、自身が持てないのは、吉岡が自分に好意を抱き続けていることを知っているからだった。 「僕からはそんな感じには見えなかったけどね。少なくとも吉岡君からは。彼ってわかり易いのかな。優作のことを好きだって顔してた」  何もかもを見透かしているような水澤の視線が胸に突き刺さってきて痛い。見て見ぬフリをしてきていた吉岡の感情。水澤に言われなくたって分かっている。だからあの時、和解はしたはずだ。 「だから、なんだよ」 動揺して弱みに付け込まれては、水澤の思い通りに従順することしかできなくなる。 何をしでかすかも分からない男に吉岡を巻き込みたくない。優作は拳を強く握り、水澤と目を合わせると彼を威嚇するように睨みつける。 「その反応だと、もう知っているのかな?知っていて友達と言い張っているなら、君はなんて残酷なことをしているんだろうね」 本人達がそれでよしとしているのなら、誰に何を言われようと関係ないはずなのに、水澤に煽られるたびに不安になる。 「あんたには関係ない」  強がっていても吉岡の気持ちは彼自身にしか分からない。吉岡は優しいから『友達でいたい』という優作に無理やり合わせているだけなのかもしれない。本当は好きだからこそ辛い想いをしている筈なのに……。 「関係大ありだ。君に少しでも気があるような男なら徹底的に排除していかないと、唆されても困るからね」 「吉岡が唆すとか絶対ねーよ。お前に吉岡の何が分かるんだよ」 「じゃあ、優作から吉岡君との縁を切ってくれるかい?」 「はぁ?なんでそんなこと……」 「吉岡君のためにも君たちは離れた方がいい。今週までは待ってあげるから、ね?」  優作の話など聞く耳を持たずに勝手に話が進んでいく。吉岡と友達を辞めるなんて選択肢は自分にはない。 けれど、本当に今のままでいいのかも自信が持てなかった。  優作に不穏を残して去っていこうとした水澤は、何かを思い出したように振り返ってくると、優作の手の中にあるスマホを指さした。 「それ、僕の番号登録しておいたから電話出てね。じゃあ、また学校で」   優作に背を向けて手を振ると去っていく水澤。 別に此奴の言うことを聞く必要なんかない。  なのに……。やはり私欲によって吉岡を縛り付けているのは否めなく、自分も吉岡に執着しているのではないかと思うと優作を虚しくさせた。

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