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すると、吉岡のスマホの通知音が鳴る。彼が画面を見た後、飯田と辻本がいる座席の方を向いては、辻本が口を大きく動かして吉岡に何か伝えようとしているみたいだった。  なんだか凄くモヤモヤする……。  自分の知らないところで吉岡が誰かと喋っているのがおもしろくない……。 「お前は何か出るの?」  飯田と辻本とのやりとりを邪魔するように問い掛けると、吉岡はスマホ画面から目を逸らし、優作の方を向いてきた。 文化祭に興味がないくせに、興味があるフリをして問うのは、吉岡が飯田と辻本の元へ行ってしまうのを見ると、何故だか独り取り残されたような気分に陥り、心が曇天としていく自分が嫌だからだ。 仲いい奴らと喋ることくらい当たり前のことなのに……。 「出るというか……。辻本がステージでヲタ芸やるらしいから、その手伝いはするかな」  そんな優作の入り乱れる感情など知りもしない吉岡は明るい笑顔でそう答えてきた。 優作が問い掛ければ真っ先に反応してくれる吉岡に安堵し、悦んでは己の独占的な思考に落ち込む。友達に束縛なんて自分の心の狭さに笑えなかった。 「なに?優、やっぱり文化祭来る気になった?」 「さぁ……」  にんまりとした表情で吉岡に顔を覗き込まれて、不覚にも胸がキュッとなる。 今まで吉岡の顔などまじまじと見る事はなかったが、意外と悪くない顔立ちをしているかもしれない……。 胸の中で疼くような甘酸っぱい感覚に浸っていると途端に肩を叩かれ、思わず身体が跳ね上がった。 「そこの二人、私語は慎もうか?」  頭上から降りてくる怒気が込められた声。見上げると、前方の黒板横に座っていたはずの水澤が、座席の間を割るようにして立っては、吉岡のことを睨みつけていた。 「なんで俺たちだけ?周りも普通に喋ってるじゃないですか?」  確かに委員が文化祭の催し案について取り仕切る中、四方八方でクラスメイト達がお喋りをしているせいか、辺りは騒がしい。 別に優作と吉岡に限ったことではなかった。  明らかに、水澤本人が優作と喋っている吉岡が気に食わなくて注意しに来た。 目を付けられるのは分かっていたはずなのに、心地よさから吉岡と話すのを制御できなかった自分に後悔する。 吉岡もそんな水澤の理不尽さに気づいているのか、やけに言葉がとげとげしかった。

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