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吉岡と下校する放課後。 文化祭の話し合いでの出来事が尾を引いているのか、今日の吉岡は静かだった。 数学準備室の時も感じたが、今まで見てきた中で温厚な吉岡が、ここまで皮肉交じりの言葉を吐いたことに戸惑いもあった。  水澤は吉岡にまで、あやふやにして触れないようにしてきた部分に突っ込んできた。 彼を下手に関わらせたくなかったのに、あろうことか水澤から吹っ掛けてきては、彼はその挑発に乗ってしまった。 その二人を強く止めることが出来なかったことに後悔する。  そもそも、自分が吉岡と喋らなければよかった話……。 「ねえ、優。あいつとどういう関係あんの」  静かだった吉岡の口が開かれる。お人好しの吉岡だから目の前であんなことが起こってしまった以上、問うてくることは予想がついていた。 「別にあいつとは何でもないし、吉岡が気にすることじゃない」 「なんでもなかったら、水澤が俺に挑発してくることなんてないと思うんだけど。昨日のことだって、優の様子変だったじゃん」  本当は誰かに縋りたくて、怖くてたまらないのに巻き込みたくないから、突っぱねても吉岡は引き下がってくれない。 「困っているなら俺に言ってよ。なんか苦しそうで見てられない……。水澤と何かあるんだろ?優のこと助けたいんだよ」 彼自身の言葉が心配からくるものだと分かっているからこそ、涙が出るほど嬉しいのに、彼には頼ってはいけないという思いが複雑に混ざり合う。  吉岡なら助けてくれるかもしれない……。 けれど、自分がされることならいくらでも我慢できるが、あんな敵意剥き出しの水澤と対峙して吉岡が危険にさらされるは耐えられない。  もう放っておいてほしい……。  優作は両こぶしを力強く握ると、立ち止まっては吉岡の方を向く。 「うざっ、お前ってそんな干渉するやつだったっけ。そういうことお前がすると、重いからやめろよ」  自分で言葉を発していて、あまりにも無慈悲である自覚はある。本人は必死で優作への想いに整理をつけようとしていると分かっているからこそ触れるべきではないこと。 そして、彼の性格上そう簡単に友達が困っていたら見捨てられる奴じゃないことも分かっている。

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