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優作の言葉を受けて、一瞬だけ傷ついた表情を見せた吉岡の顔に目を伏せたくなった。
「だよなー……。自分でも引くよ。ごめん、余計な事口出しして……」
友達で居てもらっているのは自分の方なのに、敢えて傷を抉るような発言をして、また関係に亀裂が入ってもおかしくない。
それなのに吉岡は、後頭部を掻いて、引き攣り笑顔を見せながら、明るい声音で謝ってくる姿が見ていて痛々しかった。
後悔と共に吉岡と自分との想いは対等ではいられないのだと痛感させられる。
一件告白される前に関係は戻ったかのように思えても、ふとした時に溝を感じる。
先入観で彼のことを見ては気持ちに応えられないことへの腹立たしさはあった。
俺の方こそ、ごめん、なんて自分も謝ればいいのかもしれないが、謝られる方が吉岡にとって状況を更に辛くさせるような気がして、優作は黙って前だけを向いて歩く。
暫くして、バス停が見えてきたところで吉岡に「優」と呼ばれては振り返えると、後ろについてきていると思っていた吉岡は一メートル程後ろまで離れていた。
「俺さ……。用事思い出したから、先帰っててよ」
「……わかった」
優作の返事を聞くなり、吉岡は「じゃあ」と笑顔で手を振ると即座に背中を向け、来た道を戻っていく。
理由を聞けなかったのは、吉岡が自分と距離を取りたくてとった行動だと察したからだった。彼と同じ気持ちじゃない限り、強く引き留める資格は優作にはなかった。
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