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「きっと優作が美しすぎるから吉岡君も君を唆してくるんだろうね。優作の長い髪は名残惜しかったけど……僕が大事にもらっておくよ」
閉じた瞼を開けると、目の前の水澤が左手に毛束を持って頬擦りしている。
右側だけ軽くなった感覚に、優作の髪の毛を切りをとされたのだと察した。
「気持ち悪っ」
どこまでも気持ち悪い男だと軽蔑の眼差しを向けては、水澤の毛束を持っている手を払うと、髪の毛が床に散らばっていく。
そのまま刺されてしまうのではないかと思っていただけに、少しだけ胸を撫で下ろしたが危機からは脱していない。
一刻も早く室内から逃げ出したいのに、腰が抜けてしまい、壁を伝うように尻餅をついてしまった。
優作が座り込んだ目線を追うように、水澤が屈みこんでくると、乱暴に頬を片手で挟まれて噛まれるようなキスをされる。
「や……。やめっ……」
「優作が悪いんだよ?大人しく俺のモノになってくれないから」
息をして抵抗する暇もないほど、唇で顔を固定され、頬から離れた手は、優作の暴れる両手首を押さえつけられる。
吉岡以外の奴には触れられたくないのに水澤の手が体に触れてくる。
ワイシャツをズボンから引き抜かれて、脇腹を冷たい手が這ってくる。
身体を捩っても、唇を噛まれて痛みに悶えているうちに奥までの侵入を許してしまう。腰から脇腹をなぞり、胸の突起にふれると指先で強く摘まれた。
「ん……ふっ……やだっ」
痛みと恐怖が入り交じって涙が溢れてくる。
このままじゃ殺られなくても確実に犯される……。
吉岡助けて……。
心の中で叫んだって、下階で振り切った吉岡が来てくれるはずがない。
そうしている間にも、突起を虐められていくうちにその気がないのに感じてしまう自分の身体が惨めだった。
「んやっ……やっ…だっ。……けてっ……よしおかっ」
「腹立つなーこの期に及んでまだ吉岡君の名前を呼ぶのか。君はもっと傷つけてあげないと分かってくれないのかな」
水澤にハサミの刃を顔に近づけられたときバンッと大きい音がして奴の手が止まる。音がした部屋の入口の方を見ると、吉岡が教室のドアに手を掛け、片手にスマホを持ちながら冷ややかな目をして此方を見ていた。
「お取込み中いいですか?水澤先生、まださっきの話終わってないんですけど」
常時スマホを真横に構えながら徐々に教室内へと入ってくる。吉岡が動画を録っていることは明らかで、レンズの先はしっかりと水澤を捕えているようだった。
水澤はその場から立ち上がると、手にしていたハサミを床に投げ捨てる。
「君も懲りないね。それやめてもらえる?」
水澤は彼がスマホを掲げて何をしているのか察したのか、鬼の形相で彼に近づいては、彼のスマホを持つ手を払っていたが、直ぐに元の位置へと戻されてしまう。
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