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「桜田くんって最近、雰囲気変わったよね。髪短くなったのもあるかもしれないけど、話しやすくなった気がする。桜田くんには失礼かもしれないけど、前は近寄りがたかったし、文化祭の準備とか出てくれるとは思ってなかったから……」  申し訳なさそうに眉を下げながらそう話してくる彼女。クラスの奴らとは慣れ合う気など一切なかったから、周りからそう思われて当然のことだった。   こういう時はどう返すのが正解なのだろうか。椿のような鬱陶しい女であれば冷たくあしらって済ませられていたものの、嫌いな椿(あいつ)とは違う、柔らかくて優しそうな雰囲気の女相手に優作は戸惑っていた。 「それ俺のおかげ」  優作が返答に困っていると、横から得意げに自身のことを指さしながら、吉岡が割って入ってきた。座板にお尻をつけて椅子を持ち上げると、優作の隣に並んでくる。 「どんどん話し掛けてあげてよ。優、こう見えてもいい奴だし。あ、でも……。話し掛け過ぎたら俺がヤキモチ焼くからほどほどにね」  吉岡が一瞬だけ考える素振りを見せた後で、急に肩を抱き寄せられて身体が傾いた。吉岡の肩と触れ合う感触に鼓動が早くなる。目の前では國枝が、驚いたように口元を両手で抑えて瞠目しているというのに、吉岡はどういうつもりなんだろうか。  誰が見たって今の吉岡の言動と行動は、自分たちが付き合っているような素振りに見えてもおかしくはない。   目の前の國枝だってそう思ったに違いなかった。 「吉岡くん、それどういう意味?」   不思議そうに吉岡と優作のことを交互に見ながら問うてくる。どこか不信感のある眼差しに居心地の悪さを覚え、吉岡はそんな空気を察したのか、肩を抱くのを止めて、両手を自分の顔の前で万歳した。 「ごめん嘘、嘘。そんなこと言ったら優に悪いよな。國枝、冗談だから本気にしないで?」  離れた吉岡の熱に少しだけ寂しく思いながらも、心の中で彼の言葉に否定をしていた。悪いなんてことは無いし、むしろそうだったら良いくらいに思っている。それくらい吉岡とはもっと親密な関係になれたらと思うのに、そう上手くはいかない。 苦笑いを浮かべる國枝に対して吉岡は自重気味に笑い、微かに肩を落とした彼は定位置へと戻っていってしまった。 それと同時に苦笑していた國枝も「何か分からないことあったら私に聞いてね。吉岡くんは頼りないから」と言い残しては窓際で作業をしている女子の集団の中へと帰っていく。 今すぐにでも彼に声を掛けてやりたくても、クラスメイトのいる前で告白なんか出来ない。悪いと思われているということは、まだ吉岡にはその気があると捉えていいのだろうか。 自分の告白次第で上手くいくと思っていいのだろうか。吉岡と恋人同士になりたい、想いを通わせたい。彼に触れられたことによって優作の中の想いがより一層強くなっていった。

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