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楽しそうに目を細めて笑っている吉岡が気に食わないが、彼の姿を目にするなり優作の鼓動が早まる。近づいてくる吉岡に視線を集中させては、自分に気づいてくれるのをじっと待っていた。自ら大声を上げれば気づいてくれると思うが、吉岡なら真っ先に気づいてくれるのではないかという期待もあった。
「優!」
案の定、二人と談笑している視線が優作の方へと移る。
――気づいてくれた……。
大声を上げて手を振ってくる吉岡は、二人から離れると、人の波を掻き分けながら此方へ向かってきた。公の場で名前を呼ばれることに、気恥ずかしさもあったが、人混みの中で見つけて貰えたことの嬉しさの方が大きい。
「優、店は?」
「店が落ち着いてきたからもう大丈夫だって言われた。そもそも昼までの約束だったし……。だからお前に会いにきたんだよ……」
会いに来た……だなんて自分で言葉にしてみて、顔が熱くなる程の照れが生じたが、こういう気持ちを伝えることで吉岡に自分の気持ちが伝わる貯金を増やしたかった。
水澤との会話を耳にしたから尚更……。
「そっか、もしかして優。俺との露店巡り楽しみにしてた?」
悪戯にニタっと笑顔を見せる吉岡に心臓がキュっと締め付けられる。只、揶揄っているだけだと分かっていても彼も露店巡りを楽しみにしていたのではないかと期待させられる。
「してたら悪いかよ。お前に期待してんだけど」
両腕を組んでそう独り言ちると、吉岡の耳朶が真っ赤に染まり、髪を荒々しく梳きまわされた。
折角楓に着付けてもらい、整えてもらった髪型が乱れていくのが恥ずかしくて手を払うと、吉岡は笑いながら「ごめん、ごめん。任せてよ……。優を楽しませてあげる自信はあるから」と眉を八の字に下げて謝ってきた。
「でも丁度良かった。
俺も今、ステージ終わったところだったから、優に連絡しようと思ってた」
「見てた」
「まじ⁉どうだった?」
「面白かった」
吉岡の問いに率直な感想を述べたまでだったが、彼は意外な感想が返ってきたと言わんばかりに、首を傾げた。
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