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「面白かったって、そんな面白いものでもなかったと思うんだけど」
「普段、吉岡があんな乙女チックなものを聴いてるんだと思ったら腹抱えて笑いたくなった」
「あんなんって酷いっ。俺の片手に入るぐらい好きな曲なんだけど」
頬を膨らませて怒っている吉岡が面白くて、口元が綻ぶ。やはり吉岡といる自分が好きだと思う。皮肉って素直になれないこともあるけど、吉岡はそんな捻くれた自分でも優しく受け止めてくれるから……。
「やっぱり優って着物似合うよね」
しばらく腕を組んで凝視してきた後、唐突に告げられる。吉岡に会えた嬉しさですっかり忘れていたが、彼に着物姿を見せたかったことが第一にあったことを思い出した。
「すごくいい……」
見惚れたように仄かに頬を赤らめて眺めてくる彼は、本気でそう思ってくれているのが伝わる。
「ああ、だろ?」
吉岡の反応をみて、自ら手伝いを名乗り出て楓に着付けをしてもらって心底良かったと思った。
一番言われたら嬉しい人からの言葉に素直に喜びたかったが、面と向かって喜ぶのは何だかむず痒くて、照れ隠しで強気で返してしまう。
「うわ。自分でいう?まあ、優らしいけど……」
そんな優作の発言に一瞬だけどん引いた表情を見せたが、本心からの侮蔑は感じられなかった。
それどころか吉岡は、そんな自分の返しに笑顔で応え「行こうか?」と声を掛けてくると、出入り口へと足を進めた。
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