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校内を歩いていると所狭しと、教室から食べ物の匂いが漂ってくる。ホットケーキを焼いているような甘い匂いや、香ばしいソースの香りは、午前中から何も口にしていなかった優作の食欲を掻き立てた。 「優、お腹減ったでしょ?」  何か食べ物でもと吉岡に提案しようと考えていたとき、タイミング良く、彼にそう問われて大きく頷いた。 「分かった、ここで待ってて」  優作が頷くと同時に吉岡は目先にあった教室の中へと入っていく。 彼の入っていった教室には『焼きそばとたこ焼き・一年B組とモリセン屋台』とクラスプレートに看板が下げられていた。 店名のセンスはイマイチだが、食べ物を売っていることには間違いない。もしかして吉岡は自分の為に食料を調達しに行ってくれたのだろうか。  待っていてと言われた以上、その場から動くわけにもいかず、途方に暮れていると、暫くして吉岡が教室から出てきた。 「はい、優。一緒に食べよう。俺もお昼、まだだったから」   吉岡の右手には食べ物が入っていると思しき、ふたつの乳白色のビニール袋。左手にはお茶のペットボトル二本。袋のひとつとペットボトルを手渡されて中身を覗くと案の定、焼きそばとたこ焼きのパックが入っていた。  最近の昼休みは教室でコンビニのパンばかりで吉岡と食堂へ行くことはなくなったが、以前は食堂に着くなり飯を取りに行かせるという使いパシリをしていたことを思い出す。 ひと昔前の出来事とはいえども、自分は吉岡に対して横暴すぎたと反省しては、恥知らずだったと悔い改めた。  多分吉岡はその習慣で、昼ご飯を買ってきてくれたのだろう。よく、怒らないで毎回付き合ってくれたものだと彼の優しさを改めて実感した。

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