昼食を食べ終えると、先程からの不穏な空気を持ち直すように、吉岡から校内の出店を回ることを提案された。　 完全に愛想をつかされたわけではなくて、一先ずの安堵を得たが距離は埋められないまま。むしろ遠ざかってしまった気がする。 表面上での吉岡は先ほどの沈黙が嘘だったかのように露店を回っている間は饒舌だった。 このクラスには面白い奴がいて……など、顔の広い吉岡だからこそ知る情報を永遠と話し掛けてくる。 優作にとってどうでもいい情報に過ぎなかったが、微妙な空気のままでいるよりはマシだった。悲しいけど、自分が彼に踏み込もうとすれば、一歩引かれてしまう。 もうこの距離を縮めることは不可能なのだろうか……。 校内の露店を一通り回り終えて、グラウンドにある野外ステージの催し物を観覧することにした。 これから何かが始まるのだろう、前方には文化祭の熱で興奮ぎみの生徒たちが騒いでいる。優作たちは周りに比べて、熱は冷めているものの、集まっている人混みから少し離れた後方でステージを眺めていた。 暫くすると、それぞれ赤と青のスパンコールジャケットを着た二人組が「はい、どーも」という明るい挨拶と共に登壇してきた。 何処かのテレビ番組や芸人の真似事のような軽快なトークで司会進行している。 客席と共に盛り上がる中、赤い男が咳払いをすると一瞬にして周りが静まり返る。その静寂に包まれた会場を見渡しては、マイクを口元に当てて、「イエスアンドノー。愛の！告白たいかーい！」と大声でタイトルコールをしたことで再び歓声が沸き起こっていた。 　口笛を吹いては、野生動物の猿のようなテンションで壇上に向かって叫び出す生徒。司会はそんな生徒たちに動じることなく淡々と主旨説明を始めた。壇上で今から始まるのはタイトル通りの意味で、好きな相手に公の場で告白する企画らしい。 　文化祭をきっかけにして仲良くなった女子に男子が告白。部活の後輩が、憧れている先輩にこの企画をきっかけにして告白……。 などどこかで見たことあるような恋愛イベントだ。確か店番をしているときも、クラスの女子達がこのステージについて騒いでいた記憶がある。優作には半ば関係のない話だと聞き流していた。