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大して興味のない他人の色恋をぼんやりと眺める。一組ずつ、様々な人が登壇しては告白し、成功して抱き合うと観客から盛大に祝福を受けていた。 一方で振られてしまうと、一人残された告白者に同情の念が向けられて、なんだか見ていて虚しくなるイベントだと思いながら、半ば他人事のように見ていた。 「あーあ。振られちゃった。コレみてるとさ、すげぇデジャブ見せられているみたいで胸が痛んでくるんだよね」 「ああー、あいつの」  唐突に口を開いた吉岡。なんのことか言われずとも、彼が何を示唆しているのか分かった。椿との告白現場のことだ。こんな風に大勢の前で見られたわけじゃないけど、優作が目撃してしまった現場。 「でもさ、もしこんな所で告白されたら、俺だったら断れない」 「なんで?」 「だって、あんな公の場で振ったら罪悪感残りそうじゃん。まー俺がされるってことは一生ないだろうけど」 自分からしたら、人の気配が少ない場所とはいえ校内で告白するのも、何処かで誰かが見ているかもしれないし、今の状況と大差ないように感じる。 だが、大勢と一人じゃ意識が違うんだろうか。それは優しい吉岡故の考え方なのだろうか。 「さあ、盛り上がって来ておりますが、そろそろ終盤を迎えました。ここからは挙手制で参りたいと思います!告白したい人いますかー?先生でもいいですよー?」 微かに険しい表情を浮かべながらステージを眺める吉岡。壇上では、「誰かいませんかー?」とフロアから志願者を探している。 見ている分には面白そうに楽しんでいる見物者たちも、いざ壇上にあがるとなると尻込みするのか、誰一人として手を挙げるものはいなかった。 中には、友人同士で強制的に手を挙げさせるような真似をして、「お前がいけよー」なんて擦り付けている奴もいた。 「じゃあ、俺が今からお前に告白する。お前がその気じゃないなら振ってもいいよ。俺は平気だし」 優作は吉岡にそう呟いては、スッと右手を高く挙げる。その瞬間に司会者の目に留まり「お、参加者が現れましたー。壇上に上がってきてください」とマイク越しで喋ると、一瞬にして視線が此方に集まってきた。 吉岡が断れないと言っていたから申し出た訳じゃない。逆に大人数が見ているからこそ、彼に生半可な気持ちで告白したわけではないと証明したかった。 「え……。優」 隣で吉岡が驚いていることが横目で分かったが、一切振り向かずに、人が避けてできたステージまでの道のりを堂々と歩く。 これで吉岡に振られたとしても自分自身に悔いはないような気がする。もう、彼との関係に望みはないのだと割り切れる気がする。 今は吉岡に想いが伝わればそれでいい。吉岡の気持ちが知りたい、二人きりじゃ本気にして貰えないのなら、他人が見ているという多少のリスクがあっても自分の気持ちを伝えたかった。

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