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冷静な頭を取り戻せたのは校舎に入ってからで、その間、吉岡との会話は一切ない。 放心状態だった気持ちが不安へと変わる。 吉岡の態度から告白が成功だったのかも曖昧で、結局のところ、あの場では彼の気持ちの全てを解かすことができなかった。  時刻は午後四時。ラックを首から下げて、食べ物を売り歩く学生とすれ違ったことから、文化祭も終盤を迎え始めていた。 玄関先を抜け、自教室へと戻る階段を登る。 「吉岡、あのさ。さっきのことだけど……」  ちゃんと改めて気持ちを聞かなければこのモヤモヤは晴れない。 優作はそう問いかけて、自教室のある二階まで辿り着いたとき、吉岡が足を止めて振り返ってきた。 「ごめん、優。先に教室戻ってて?」 「なんで」 「飯田のとこ、ステージの反省会があること忘れていたんだ」 「それって手伝いのお前が行かなきゃなんねーの?」 隙あらば、飯田たちの所へ行ってしまう彼。今行かせてしまったら本当に駄目になってしまうような気がした。折角二人きりになれたのに、まるで避けられているみたいに思えてくる。 「うん、手伝いだからって出ないわけにいかないからさ」  行ってほしくない。まだちゃんと吉岡の気持ちを確かめられていない。 優作の返事も聞かずに、背を向けて、三階へと繋がる階段を上って行こうとする吉岡の左手首を掴もうと試みたが、呆気なくすり抜けてしまった。 吉岡の気持ちを確かめるどころか、彼に自分の気持ちが伝わっていないような気がして、一抹の不安を覚える。 大丈夫……。まだ時間はあるし、吉岡は単純に反省会に行っただけかもしれない。 教室に戻ってくれば、きっと俺の所に来てくれる……。 僅かな期待を抱きながらも、優作は一先ず教室へ戻ることにした。店番を手伝った以上、片付けを手伝わない訳にいかない。 クラスの為に動けば吉岡は褒めてくれるから……。 文化祭終了のアナウンスが流れ、教室に戻ると早々に教室は片付けを始めていた。黒板を消したり、装飾物を撤収したりと、優作も國枝に声を掛けて手伝うことにした。 暫くして、音楽室に預けていた机を教室に搬入している途中で、吉岡が飯田と辻本とともに教室に戻ってきた。 吉岡は絶対に話し掛けてきてくれると作業をしながら待っていたが、例の二人と楽しそうに搬入を手伝いながら話をしているばかりで、結局最後まで自分のところに来ることはなかった。 待っていても来ないのなら自ら吉岡に声を掛けようとしても、二人がいるから近づけない。胸がチリチリと痛む。 もう、吉岡とこれ以上話すことも叶わないのだろうか。 自分のこの気持ちはなかったものとして、次からまた、彼とは友達のままでいるしかないのだろうか……。

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