本気のつもりで告白したのに、吉岡には一ミリたりとも伝わってなかったショックと、自分の行動によって吉岡を困らせてしまった申し訳なさが織り交ざる。 彼の視線が冷たくて直視できない。 「確かに……悪かった。だけど、お前を弄んだつもりはない。あれはっ、俺なりの誠意というか……本当にお前のことが好きなんだよ」 　頭を深く下げて詫びた後に、顔を上げて吉岡との視線を逸らさずに今の自分の想いの丈を話す。届いてほしくて、心を震わせて話したせいで目頭が熱くなる。 「でも優は俺の事、前に振ったよね？そんなことある？俺は優の好みに当てはまらない」 　感情を露わにしている優作の一方で、吉岡は至って冷静でそれどころか目を伏せられる。 「好きじゃなきゃ……。好きになっちゃいけないのかよっ。この前だって俺なりに本気で言ったつもりだったけど、お前は冗談だって言うから……。じゃあ、大勢の前で告白すれば信じてもらえると思ったんだよっ」 優作は想いを受け止めてくれない吉岡に、むせび泣きながら訴える。掌で涙を拭っても感情が涙となって溢れてくる。 吉岡はそんな優作を見るなり、両手で額を抱えては深く溜息をついた。吉岡を困らせているのは分かっている。 呆れるのも当然だと思っている。 ――だけど、泣きたいくらいに好きだから……。 ――届いて欲しくて……。 ガタっと椅子が引かれた音がした。顔を上げると吉岡が座席から立ち上がって、此方へと近づいてくる。 「いつから？優はいつから俺のことそう思うようになったの？」 　それでもまだ怒っているのか、呆れ口調で問われた。 「水澤のことがあって、お前を意識するようになってから……。水澤に触れられたとき凄く不愉快で、お前のいつも撫でてくれる手が恋しくて、抱き締められたとき凄く安心した。それから触れられるのはお前じゃなきゃ嫌だ、もっと俺がお前を独占したいって思うようになって……。それが好きじゃなかったら何だって言うんだよ……」 　自分の気持ちを吐露したことで、気持ちが落ち着いてきたが肝心の吉岡の気持ちが分からない。 色の変わらない瞳で彼は何を思っているのか……。 「俺さ、優に初めてキスされた時。すげぇ傷ついたんだよね。好きな人にキスされて嬉しいはずなのに、なんか生きたモノに触れた感じがしなくてさ。一瞬で優は、俺の事が微塵も好きじゃないんだって分かった」 「……ごめん」 　今の自分では考えられない行動。振られたことの腹いせで吉岡に当てつけのようなキスをした。それだけならまだしも、彼の気持ちを踏みにじって、乗り換えるような発言をした。