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吉岡の気持ちに気づいていたとしても、しちゃいけないことだった。あの時に戻れるのならやり直したいくらい後悔している。
「望みなんてないって分かってたから、友達だって割り切ろうと、俺なりに気持ち抑えて我慢してたの、優は知ってる?」
先程まで冷めきっていた吉岡の瞳が不安げに揺れる。
「最近おかしいと思ってたよ。妙に距離が縮まった感じがしたし、普段は俺が当番だったら絶対に待たずに帰るくせに玄関先で待ってたりするし。まさか……とか。もしかして……とか期待したくなったけど、したらした分だけそうじゃなかった時の傷が深くなるって分かっていたから、全部優の気まぐれで受け止めるしかなかった。それでも、一緒にいたいから優の重荷にならないように装っていたのに……。そんな俺の気持ちを優は考えた?」
自分が苦しいなんてばかり思っていたけど、吉岡にはそれ以上に苦しい思いをさせていた。
散々心を揺さぶられて、仕舞いには振られた男からの告白。
もし自分だったら耐えられない。冗談だと疑われてもおかしくはないことを今までしてきた。
それで今更、信じてくれだなんて虫が良すぎる話だった。
吉岡は自分の目の前に立つと、じっと見つめてきた。彼の右腿の前で握られている拳に力が入っていると分かる程に震えている。
何回謝ったって許してくれなんて思ってないし、散々吉岡の気持ちを振り回しておいて彼がすんなり自分を受け入れてくれるなんて思ってない。それなら彼の気が済むまで殴ってくれて構わなかった。
詰め寄ってくる吉岡に拳の一つでもお見舞いされるのだと身構えていると、右腕を掴まれる。
「優は俺とどうなりたいの?」
身構えていたら彼にそう問われて狼狽えた。どうなりたいかなんて決まっている。けれど、今までのやり取りからじゃ吉岡の真意が分からない。この掴まれた右腕もどういう意図で彼が掴んできているのかも……。
「お、お前とは……。友達としてじゃなくて、恋人として付き合って行きたいって思ってる……」
自らこんなことを口にするなんて性に合わず、全身からむず痒さで顔が熱くなる。
優作が恥を忍んでそう口にすると、右腕を勢いよく引っ張られて吉岡との距離が更に縮まった。
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