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あと、5cm動けば吉岡と体が密着するくらいの距離に心臓が跳ね上がる。 「じゃあ、優からキスしてよ。あの時と同じ気持ちじゃないって証明して」 「えっ……」  吉岡が目を瞑る。見惚れるほど整った顔立ちをしているわけじゃない。至って普通の男の顔。だけど、安心感があって、優作にとってはたくましく見えて……。 目の前で待ち構えている彼を見て、優作は喉を鳴らした。たかがキスするだけとはいえ、これに全てが掛かっていると言っても過言ではない。 今までの奴には何とも思っていなかった行為が吉岡を相手にするだけで、数倍緊張した。 吉岡の考えている事が分からない不安と、その待ち構えている唇を重ねたい、触れたい気持ちが交差する。 このキスが冗談や揶揄いではないことを証明出来たら、吉岡と気持ちを通わせることができたと言えるだろうか。 優作は吉岡の両腕をそれぞれの手で掴むと、ゆっくりと顔を近づける。時折、浅く息を吐きながら、やけに艶っぽくて柔らかそうな唇に自分の唇を重ねた。 触れたところから温もりが伝わってきて心地がいい。 もっと触れていたい衝動を抑えて、直ぐに唇を離す。 吉岡の反応を見ようと顔を背けたとき、右腕を強く引っ張られて、優作の背けた顔を追いかけるように吉岡が迫ってくると、一度離れた唇が再び触れ合った。 「んっ……」 吉岡の掴んでくる腕が更に力を増す。 音を立たせながら二、三度啄むようなキスをした後に、唇の隙間を舌でこじ開けられ、奥まで舌が絡みついてきた。  優作は今まで見たことがなかった、彼の強引さに驚いて目を瞠っていたが、口腔内を舌先でなぞられていくうちに、夢中で吉岡に応えようと自らも彼の舌先に合わせて重ねる。  歯列をなぞられ、彼の舌を追いかけるように絡ませ合うと、キスだけでも溶けてなくなってしまいそうな気持ちよさに腰が抜けて、優作はそのまま崩れるように座り込んだ。優作が座り込む間も、吉岡は腰に手を回して支えながら、優作の腿の間に自分の膝を立たせてキスを続けてくる。

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