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「それより、よっしー。君を探していたのは他でもない、君の推しのみゆゆがさー。ファンクラブイベントを開催するって情報が……」  途端に辻本が吉岡の肩を抱きながら内緒話でもするかのように背を向ける。 それを見た瞬間に、収まったはずの嫉妬心が再び燃え始め、眉間に皺を寄せては、聞き耳を立てようと凝視する。しかし、どこの誰かも知らない音痴な歌声にかき消されてしまい、よく聞こえなかった。  飯田にばかり注意を向けていたが、やはり吉岡の友達は距離間が近いような気がする。 はたまた、友達というものは、これが当たり前なのだろうか。 「そんなに嫌?俺らと千晃が一緒にいるの」  皺を刻んで凝視していたせいか、隣に並んできた飯田が、自らの眉間に人差し指を置き、優作が険しい表情で睨んでいることを教えてきた。  先ほどまで敵視していた人物に話し掛けられ、おまけに表情を指摘されるなんてみっともなくて羞恥にみまわれる。 「いや、別に……」 「安心しろよ。辻本も俺も、千晃のことをそういう対象として見てないから」 「別にそういうわけじゃない……」 飯田と辻本がそうではないと分かっていても、好きな奴が自分以外の奴とベタベタしているのはいい気がしないのが、正直なところだった。 「というか、俺はお似合いだと思うけど。桜田と千晃」 「え?」 優作は、飯田の発言に瞠目する。 自分と同じ思考の奴は少数派な上に、一般的には毛嫌いするやつの方が多い。辻本は分からないが、吉岡と自分のことを容認しているような言い草の飯田は、もしかして理解ある奴なのだろうか。 「飯田、俺の見ていない間に優に変な事吹きかけないでよ」  そんな飯田の発言に驚いていると、先ほどまで辻本と話していた吉岡が自分たちの所へと戻ってきた。怪訝そうな顔で飯田のことを見ている。  飯田はそんな優作たちを見て、「二人してラブラブじゃん」と呟いては、「千晃いい写真みせようか?」とスマホを取り出してきた。

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