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「何々?」
吉岡が食い気味に飯田のスマホを覗き込むと、暫くしないうちに彼の耳朶が真っ赤に染まる。
「え、俺らじゃん。優これ見てよ」
吉岡が飯田からスマホを取り上げると、優作に画面を見せるように差し出してきた。画面の中に写っていたのは、紛れもなく、昼のステージの自分と吉岡で、写真は吉岡が自分の額にキスをしているところだった。
確かに見世物のように誰かに撮られていてもおかしくない状況ではあったが、まさか飯田に知られているとは予想していなかった。だから、さっきお似合いだとか、その気はないだとか呟いてきたのだろうかと納得する。
「女子から回ってきた。正確には、俺の幼馴染の|木比良《きひら》からなんだけど。ほら、あいつ、腐女子で男同士がイチャついている漫画好きだから、うちにもボーイズラブあったんだって騒いで送り付けてきた」
「飯田っち、なになに」
淡々と写真の発信源を説明してくる飯田の傍ら、吉岡と優作の間に割って入るように辻本もスマホを覗き込んできた。
「うわ、よっしー。大胆。ということは、よっしーの片想いは成就したってこ……」
辻本が写真を目にするなり、周りの視線を集めるほど大きな声で喋るものだから、吉岡が慌てて口を抑えていた。
「辻本、大声はやめて。てか、そもそも、飯田の幼馴染もだけど、飯田くん物知りすぎて怖いんですけど……」
吉岡に口封じされて身じろぐ辻本にジト目で飯田をみる彼。
その飯田は、ケロッとしながら優作が手にしていたスマホを奪い取ってきた。
その三人の様子を見て、飯田と辻本から侮蔑のような態度は感じ取れずに、優作は戸惑う。
同性の恋愛に一歩引いた目で見られるのは当然のことのように思っていた。少なくとも優作の周りはそんな奴ばかりだった。
けれど、飯田と辻本からはそんな様子は感じられないし、なんなら普段と変わらず接しているように見える。改めて吉岡の周りは恵まれているのだと実感する。
それがちょっと羨ましいような……。
まぁ、自分には唯一の理解者である楓がいるけど、楓だって一応、血の繋がりのある身内だ。
赤の他人に受け入れて貰ったことなかったからやっぱりいい奴にはいい友達がつくのだと、優作は半ば羨望の眼差しで三人を眺めていた。
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