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エピローグ
後夜祭を終え、吉岡と歩く帰り道。
「お前っていい友達持っているよな」
通い慣れたバス停の前まで辿り着いたとき、時刻表を見ていた吉岡の背中にそう呟いた。
それを耳にした吉岡は、此方を覗き込んでくると頬を緩ませて含み笑いをしてくる。
「もしかして、優、妬いちゃった?」
「そんなわけないだろ……。俺の周りには、あいつらみたいに受け入れてくれる奴いなかったから、そう思っただけで……」
おどけた調子で言ってくる吉岡に狼狽えて、熱くなった顔を隠すように背ける。ヤキモチとまではいかないが、羨ましいと思ったことには違いない。
「俺が、いるじゃん?優の一番の味方が」
吉岡が自身を指差してアピールしてくる。しかし、暫くして何かを思い出したかのように指差しを止めると、優作の方に身体ごと向き直り、照れたように鼻の頭を人差し指で掻いた。
「まあ、もう友達ではないけど……」
吉岡の照れにつられるように優作も、顔を俯けては、自分のつま先を見つめる。もう片想いでも、気持ちを隠してやり場のない感情に自暴自棄になる必要もない。
ちゃんと隣には好きな人が居る。向かいから熱視線を感じて顔を上げると、吉岡と目が合った。
「何?」
「やっぱり、優って綺麗な顔しているよね」
「まぁ……」
改めて面と向かって言われるのは照れ臭い。だけど、至って真剣な眼差しの吉岡の瞳を逸らそうとは思わなかった。
「性格は自分勝手で、感情が行動に出るから俺相手だと容赦ないし、気分屋だし……」
「はぁ⁉」
褒められたかと思えば、急に悪口のオンパレードで心を抉られたが、吉岡の言う通りなので、これと言って何も言い返せない。
「すぐ不都合になると自暴自棄になるから、危なっかしくて目が離せないんだよね」
吉岡の独り言のような呟きを聞いていると、今日の最終便であろうバスが到着した。
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