124 / 125

エピローグ

後夜祭を終え、吉岡と歩く帰り道。 「お前っていい友達持っているよな」   通い慣れたバス停の前まで辿り着いたとき、時刻表を見ていた吉岡の背中にそう呟いた。 それを耳にした吉岡は、此方を覗き込んでくると頬を緩ませて含み笑いをしてくる。 「もしかして、優、妬いちゃった?」 「そんなわけないだろ……。俺の周りには、あいつらみたいに受け入れてくれる奴いなかったから、そう思っただけで……」 おどけた調子で言ってくる吉岡に狼狽えて、熱くなった顔を隠すように背ける。ヤキモチとまではいかないが、羨ましいと思ったことには違いない。 「俺が、いるじゃん?優の一番の味方が」  吉岡が自身を指差してアピールしてくる。しかし、暫くして何かを思い出したかのように指差しを止めると、優作の方に身体ごと向き直り、照れたように鼻の頭を人差し指で掻いた。 「まあ、もう友達ではないけど……」  吉岡の照れにつられるように優作も、顔を俯けては、自分のつま先を見つめる。もう片想いでも、気持ちを隠してやり場のない感情に自暴自棄になる必要もない。 ちゃんと隣には好きな人が居る。向かいから熱視線を感じて顔を上げると、吉岡と目が合った。 「何?」 「やっぱり、優って綺麗な顔しているよね」 「まぁ……」  改めて面と向かって言われるのは照れ臭い。だけど、至って真剣な眼差しの吉岡の瞳を逸らそうとは思わなかった。 「性格は自分勝手で、感情が行動に出るから俺相手だと容赦ないし、気分屋だし……」 「はぁ⁉」  褒められたかと思えば、急に悪口のオンパレードで心を抉られたが、吉岡の言う通りなので、これと言って何も言い返せない。 「すぐ不都合になると自暴自棄になるから、危なっかしくて目が離せないんだよね」  吉岡の独り言のような呟きを聞いていると、今日の最終便であろうバスが到着した。

ともだちにシェアしよう!